Vol.03 テニス[前編]

有本響さん
(13)/桜田倶楽部所属
二佐江さん

有本響さんは昨年、12歳以下の全国テニス3大大会の一つ、「全国選抜ジュニア選手権」で優勝。錦織圭選手の名も刻まれる歴代優勝者リスト入りを果たした注目のテニスプレーヤー。あどけなさの残る中学一年生ですが、東京オリンピックや世界で活躍する選手を目指して、ストイックな毎日を送っています。ときに長丁場になる試合をパワーとスタミナ、テクニックを駆使して孤独に戦い続けるテニスという過酷なスポーツ。一体どのようなお弁当を食べているのでしょうか?

練習に遠征に、テニス漬けのストイックな日々。  いまはテニス漬けの日々を送っています。休みは火曜日だけ。それ以外は17時半から21時まで練習なので、平日はゆっくり休む時間もなかなか取れないほどです。主人が響を迎えにいくときは、おかず入りのおにぎりとスープを渡して、車のなかで食べながら帰ってきてもらいます。家に着いたらまた少し食べて、すぐにお風呂に入って寝るという感じ。途中でクラブを変えたので多少違いますが、こういう忙しい生活は週6日コースに入った小学校2年生の頃から。お友達と遊べなくなってしまうし最初は心配だったんですが、本人の強い希望がありました。

 響がテニスを習い始めたのは5歳のとき。近所にテニススクールがオープンしたので、週1回50分のレッスンに参加するようになったんです。うちは主人も元実業団のテニス選手でしたし、主人の父は若いころ全日本選手で、いまでも大会のために遠征するほどテニスが好きなんです。そういう環境だったので「家族でできればいいな、テニスを好きになってくれたらいいな」と思っていました。テニス選手にしようとまでは考えていなかったんですよ。

お弁当とともにできるだけ持たせるようにしているという汁物。屋外での試合では冷えた身体を温められるように保温性の高いスープジャーに入れる。

親の思い込みを子どもは軽く超えていく。  幼稚園の年長のとき、スクールで小さな大会が開催されたんです。響も小学校低学年の部に入れてもらったんですが、内心「試合になるのかしら」なんて思っていたんですよ。そしたら優勝しちゃったんです。小さな子が頑張って奮闘しているものだから、周りの人がたくさん応援してくれて。本人もすごく喜んでいたし、心に残っている出来事だと思います。わたしにとってもそうですね、子どもの可能性は無限で親が勝手にできないと思い込んではいけないんだと痛感しました。そのスクールのコーチから「ちゃんとテニスを習ってみてはどうですか」というアドバイスも受けて、徐々に上を目指すようになりました。

 主人はあまり手取り足とり教えるというようなタイプではないですが、道具のことやトレーニングのことなど必要なときに必要なアドバイスをしていますから、頼り甲斐のある存在なんじゃないかな。でもそれがね、つい最近、二人で試合して響に負けたんですよ。悔しがっていましたが「上手くなったなぁ」って選手としてさらに認めるようになったと思います。

痙攣防止のためによく持たせているミックスナッツは不飽和脂肪酸が含まれていて身体を整える。今回のお弁当のサラダもくるみ入り。食感も楽しくなる。

どうやったら食べてくれるか。試行錯誤を楽しむ。  響はあまり食欲旺盛なタイプではないので、以前は一口二口で「もういいかな」ってなっちゃうことがあったんですよ。それで、ご飯を小分けにしてつまみやすく、見た目にも圧迫感が出ないように気を遣っています。実際、試合の合間が短いときもありますから、ちょこちょこ食べられるものだと便利なんですよね。

 主菜、副菜、乳製品、果物、ご飯、汁物の6つを意識して栄養バランスも考えていますが、一番はエネルギー源のご飯を食べてもらうこと。いろいろと調べて美味しい塩を入手したんですが、それを使うようになってからご飯もよく食べてくれるようになりました。

 周りから「響さんは繊細なプレーをするね」って言われるんですが、わたしにとってはすごく意外なんです。家ではわんぱくで落ち着きもないし「そういう面もあるんだ」って。昨年の全国選抜の決勝戦のときもびっくりしました。見たことないほど集中していて、それが試合中ずっと途切れなかった。テニスを通して予想以上の成長をしていく息子の姿を見るのはすごく面白くて、サポートしているのが楽しくてしょうがないんです。

初めての海外合宿のときは心配したが本人はケロリとして楽しんでいたという。一人っ子の響さん。テニスを通していろんな場所に友達をつくって欲しい。

※2016年12月 公開