Vol.03 テニス[後編]

有本響さん
(13)/桜田倶楽部所属
二佐江さん

初対面の取材陣にも「こんにちは!」と元気に挨拶。フレンドリーで人懐っこい笑顔の裏には、繊細でテクニカルな響さんのプレースタイル同様、人一倍の野心が秘められているのかもしれません。舞台が大きくなり、注目されるほどに力を発揮する、未知なるパワーを秘めた13歳。テニスを始めて以来、飽きることなく湧き上がる「もっと強くなりたい!」という強い想いが、日々の練習に力を与え、彼をさらなる高みへと押し上げています。

調子がいいと自分の能力を超えたプレーができる。  いまの生活は大変です。夜は時間がないので朝6時に起きて学校の勉強をしているんですが、ギリギリまで寝てしまうこともあります。でもテニスが楽しいから、止めようとは思わないですね。日曜日は練習が午前中なので午後は休めるし、そこで寝たり学校の勉強をしたりしています。勉強は、数学が一番難しいですね。

 課題は試合でミスをするとイライラしてしまうこと。それで簡単にポイントを落としたりしてしまうので、もっと落ち着いてテニスに取り組まないといけないと思っています。家でも洗濯物を片付けるのを後回しにしたりするので、当たり前のことを当たり前にできるようにしないと。逆に調子がいいときは自分の能力を超えたテニスができるときもあって、自分でもびっくりするショットが出たりします。

 僕は自分から攻めるプレーが多いので、攻撃的なプレーヤーかなと思います。自信があるのはドロップショット。パワーで押すよりもテクニックでポイントを押さえて勝負しています。

時間のない試合の合間にエネルギーを効率よく補給するため、簡単に口にできる補食選びが重要になる。バナナはケースに入れて2本持ち歩いている。

もっと強くなりたい。そのために食べなければ。  去年の全国選抜ジュニアの決勝戦は、自分でも印象に残っています。スコアも内容もいままでで一番いい試合でした。試合前は、相手は格上の選手だけど簡単にやられるものか、ベストを尽くそうという意気込みだったんです。それが良かったのか、緊張しまくっていたんですが、プレッシャーに負けずに思い切りできました。徐々に自分のペースに持っていって、途中からはいいときのパターンになりました。

 将来は、東京オリンピックで世界一位になって、グランドスラムを全部制覇できるようなトッププレーヤーになりたいです。そのためにはもっと食べてパワーをつけないといけない。食べなきゃいけないという気持ちは持っています。

 お母さんのお弁当は美味しいですよ。いつもいろんな料理をつくってくれます。一気に食べるのが苦手なので、ちょこちょこ食べられるように工夫してくれていて助かっています。お弁当のおかずで一番テンションが上がるのは唐揚げ。試合用のお弁当には入っていないですが、学校のお弁当には入れてくれます。

物怖じしない堂々とした性格で取材中も緊張することなくこの笑顔。まだ中学一年生。言葉の種類は多くないが、しっかりと自分の考えを持っている。

舞台が大きくなるほどワクワクする。  テニスをずっと続けてきて成績も残せるようになって楽しいけれど、一番の魅力はやっぱり自分より強い選手に勝ったときです。大会が大きくなるほどワクワクするし、準決勝とか決勝に進むたびに楽しみになります。不安にはあまりなりません。競って勝つのが好きだけど、心も身体も疲れるのでストレートで勝てるようになりたいですね。

 テニスで遠征したり合宿に参加したりするようになって、全国にたくさん友達ができました。一緒に生活をするといろんな考えやプレーを知ることができるからそれも楽しいです。

 家族のことですか? お父さんは、テニスを優しく教えてくれるし、テニス選手の気持ちが分かるからいろんなことを気にかけてアドバイスしてくれます。
お母さんは、食事を始めとして私生活のいろんな面で支えてくれています。両親の期待を感じているので、いままでサポートしてくれた分、恩返しできるようにいい成績を残していきたいです。

勝負の度に、大人が予想する以上に吸収し、心も身体も成長していく13歳。母への力強いメッセージを胸に、夢に向かってストイックな日々を邁進する。

※2016年12月 公開