Vol.05バドミントン[前編]

齋藤夏さん(17)埼玉栄高校女子バドミントン部所属千嘉子さん

昨夏リオ五輪で金メダルを獲得した、バドミントン女子ダブルス。世界に誇る種目で伸び盛りの大型プレーヤー、齋藤夏(なつ)さん。小学生時代から注目を集め、名門・埼玉栄中学校では団体戦優勝に貢献。埼玉栄高校では1年生からレギュラーとなり、3月の全国選抜大会では個人戦ダブルス準優勝。2年生となり、中心選手として迎えるインターハイ。全力サポートするお母さんのお弁当も、ますます気合が入っているようです。

好き嫌いもなく、よく食べる子どもだった。

主人とはバドミントンを通じて知り合いました。夏(なつ)と3学年上の姉・栞(しおり/女子シングルス日本B代表)は、バドミントンが生活の一部という環境で育ちました。当時は自分がバドミントンを頑張りたくて、小さい頃から娘たちを練習場所に連れていっていたんです。そんななかで、姉の栞は小学校1年生から、夏は幼稚園の年中ぐらいから、地元のジュニアクラブで本格的にバドミントンを始めました。

夏は最初から、この子はちょっと違うなと感じました。姉の栞もですけど、ずっとバドミントンを見ていたからでしょうか、教えなくても最適な打点がわかっている感じ。さらに、負けず嫌いな性格がありました。

体格にも恵まれて、姉の栞が169センチ、夏は167センチ。私は小柄ですが、主人が大きいんですよ。小さい頃から好き嫌いもなく、よく食べる子どもでした。
いまは体重が増えることを気にしていて、ご飯の量を減らすため、お弁当箱のご飯とおかずの容器を逆にしてほしいと、自分から言ってきました。ジュニアナショナルのメンバーとして栄養指導を受けて、自分でもいろいろ勉強しているみたいです。

アスリートに欠かせないタンパク質を補うべく大きな卵焼きを入れる。美味しそうな黄色が茶色くなりがちなお弁当に華を添える。彩りはお弁当作りで意識しているポイント

ハードな試合を戦う、力の源になれ。

普段から食事とお弁当は、彩り、栄養バランス、そして、旬のものを取り入れることを意識しています。

食べやすさも大事ですね。今日のお弁当はご飯ですが、試合の日は麺類が多いです。バドミントンの大会は一日5~6試合ということもあるので、ゆっくりお弁当を広げる時間がないんですよ。空いた時間に食べられる分だけ食べて、すぐ試合。だから食べやすく、食が進む麺類はうってつけなんです。麺とつゆを別々に入れておき、サッと食べられるようにしています。「明日はサラダうどんにして」と、夏がリクエストしてくることもありますよ。
ハードな日々を送っていますので、お弁当が戦う力の源になってほしい。そんな気持ちを込めて毎日作っています。

もともと、自分が頑張りたかったバドミントンですけど、子どもたちが始めてしまったので、私は裏方。もうずいぶん前に抜かされてしまって、技術的なことは主人に任せていますが、母親として、バドミントンへの情熱も込めて大きな声とお弁当で応援していきます。

姉妹二人をトップアスリートに育てた秘訣は「継続」。子どもたちの練習に付き合い、毎日体育館に行ったという。「自信が芽生え、自分で目標を持ち始めると子どもは変わります」

日本一を目指す厳しさを知っているから、心を鬼にする。

普段は厳しい母親だと思いますよ。私自身がバドミントンに取り組んできて、目標を達成するためにはどういう心持ちでいなくちゃいけないのか、日々の練習にどう取り組んでいかなくちゃいけないのか、そういうことはわかっていますから。娘たちにも、「日本一になるという目標を達成するためには、こういうことをしなくちゃいけないんだよ」とか、「毎日の練習の中でこれができないと、目標は達成できないよ」と口を出しています。かなり厳しい口調で言うので、怖いと思います(笑)。

将来は、バドミントン選手としては、日本の代表として世界のトップで戦えるようになってほしい。一人の人間としては、「選手として一流であれば、プライベートも一流の人間であってほしい」と話しています。バドミントンがうまいからって、何をやってもいいわけじゃない。コートの外でも人間として尊敬されるようになってほしいと、いつも願っています。

一日が終わるたび「×」がつけられるカレンダー。千嘉子さんのモットー「継続は力なり」を表しているかのよう。姉妹の試合の日程がびっしり書き込まれている

※2017年7月 公開