THERMOS

Talk & Talk

次世代の
“マイボトル”
を設計せよ!

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開発部 丸山さん

新潟県のほぼ中央に位置する燕市は、金属加工や洋食器の一大産地として世界的に知られた、いわば“ものづくり”の聖地。この町にあるサーモス新潟事業所では、製品設計や品質管理といった、サーモスのものづくりの根幹を一手に引き受けている。
サーモスがサントリー食品インターナショナル(以下サントリー)と共同開発した新製品 MY BOTTLE DRINK「drop」(以下『ドロップ』)のボトルも、3年の歳月を掛け、ここ新潟で開発された。今回は、入社以来『ドロップ』の開発に邁進してきた、ある技術者の試行錯誤の軌跡をお伝えしたい。

初仕事は、サーモス初の共同開発。

サーモス新潟事業所の開発部設計課に勤務する丸山高広は、2011年に中途入社した若手技術者。高専を卒業してから首都圏のプリンタ関連メーカーに勤めていたが、いつかは故郷の新潟に戻りたいという希望をかなえ、サーモスへの転職を果たした。

話は丸山の入社直後に始まる。ある日上司に呼び出された丸山は、こんな話を告げられた。「サントリーと初めて共同開発する新製品『ドロップ』の担当をしてみる気はないか」と。聞けばその新製品は、コーヒーやお茶などの原液が入ったポーションで飲み物をつくり、そのまま保温・保冷できる次世代型のボトルだという。斬新なコンセプトに魅力を感じた丸山は、開発への参加を即決した。実質的なサーモスでの初仕事であった。

3Dプリンタ

3Dプリンタで、試作・開発をスピードアップ。

メカニカルな設計については経験のあった丸山も、異業種とのコラボレーションは初めてのこと。企業の壁を乗り越え、意見の集約やデザインの承認などを進めるのは手間暇のかかる仕事となった。「サントリーさんにポーションのサンプルをお願いすると、すごい量が送られてくるんです。徹底的に実験や試作をしてくれということなんでしょうけど、私たちの業界との違いには驚かされました」と、丸山は笑う。

とはいえ開発に遅延は許されない。焦る丸山らを救ったのは、いま話題の3Dプリンタだった。従来、ひとつのボトル形状を試作するには、モデルの発注などで3週間近い時間がかかっていた。しかし3Dプリンタを使えば、わずか数時間で魔法のように試作品が完成してしまう。「3Dプリンタがなければ、これほど短期間での開発は無理でした」丸山もそう語るように、この経験は、サーモスのものづくりにとっても大きな転換点となった。

“カチリ”と音のするレバーこそ、こだわりの会心作。

『ドロップ』と従来のボトルには、ひとつ大きな違いがある。『ドロップ』では、何らかの方法でセットしたポーションを開封し原液を絞り出さなければならない。そのしくみの開発が、最大の難関だったと丸山はいう。当初丸山らは、フタを捻ることでポーションをつぶす機構を考えていた。ところがそれでは構造的に複雑になり、何より使い勝手がよくない。この方法は却下され、もっと使いやすい“何か”を、一から考えるよう命ぜられた。

数え切れないアイデア出しと3Dプリンタによる試作。試行錯誤が続いた。そしてある時丸山は、ポーション開封用のレバーとボトルの取っ手を一体化するというアイデアにたどり着く。これならシンプルで、チカラのない人でも操作がしやすい。こうして“カチリ”と小気味よい音のする特徴的なハンドルが誕生した。「これを思いついた時はやったなぁと。ようやくボトルのキャラクターが確立できたと思いましたね」まさに、丸山ら、会心の一打であった。

仕事だけでは、仕事はできない。

技術者として妥協はしたくない。けれど無駄な衝突も起こしたくない。そう考える丸山が、仕事で最も重視しているのは周囲とのコミュニケーションだ。丸山はいう。「今回の仕事でも、ひとつ障害を乗り越えたり、回り道したりするたびに、先輩や同僚、協力会社の方など、多くの人たちに助けていただきました」

実は丸山は、単純な仕事人間ではない。休日には、自然の豊かなこの新潟で、自転車や釣りなどの遊びに没頭する趣味人でもある。「まわりにも趣味の豊富な方が多いので、そういう話をきっかけに、交流を深めていくことができたと思います」入社間もない丸山が周囲と協調する上で、仕事以外の人間関係が、どれだけ役に立ったことか。仕事の話だけでは仕事は進まない。それは技術の現場でも同じと、丸山は強調する。

丸山らの苦労とアイデアが実を結んだ新製品『ドロップ』は、いよいよ11月上旬、首都圏のセブン-イレブンで先行発売される。「たくさんあるポーションで、いろいろな味を楽しんでほしい」と、自信作を推奨する丸山だが、今後はポットやシャトルシェフなど、ボトル以外の設計にも取り組んでいきたいという。『ドロップ』を育て、『ドロップ』に育てられた技術者丸山。これからもユニークなアイデアで、私たちを唸らせてくれるに違いない。

drop専用 真空断熱ボトル/JNK-280