THERMOS

Talk & Talk

「本質」を見つめる
品質管理。

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品質管理 堀川さん

サーモス新潟事業所の一角には不思議な部屋がある。そこでは、真剣な顔で”まほうびん”を床に落とし続けるスタッフや、延々と”まほうびん”のフタを開閉し続ける産業用ロボットが働いている。ものづくりの陰で製品をチェックし、お客様の不満足を解消する品質管理は、製造業にとって生命線ともいえる部門だ。今回は、品質の番人として活躍する一人のプロに密着し、サーモスの品質に対するこだわりの一端を探っていきたい。

ものづくりのプロから品質の番人へ。

新潟事業所で働く堀川修は、入社以来、金属加工や真空熱処理、塗装など、工場におけるさまざまなプロセスを経験してきた。いわば製造のエキスパートである。その手腕を見込んだサーモスは、次に堀川を品質統括部・品質管理課という重要な部署に送り込んだ。堀川は品質関係の業務に配属されて、もう12,3年になる。サーモスはなぜ、ものづくりの経験を積んだ人材を、品質管理の最先端に投入したのだろうか。

“お客様基準”で、より厳しい品質を追求。

その理由を探る前に、サーモスの品質管理のしくみについて触れておきたい。サーモスでは、社内規格である『製品規格』や『製品品質要求規格』に基づき、海外などの製造工場との間で、厳密な『品質契約』を結んでいる。工場では、これらの厳しい基準に沿ったものづくりが行われ、最終の出荷検査を経て品質が保証された製品を送り出している。さらに、新潟事業所では工場の厳格な品質検査に適合した製品に対し、もう一度社内規格に照らし合わせた完成品検査が実施される。この二重のハードルを突破できない限り、サーモス製品は市場に出ることがないのだ。

検査基準も大変に厳しい。例えば、”まほうびん”などが落下しても壊れないか調べる試験の基準は、JIS(日本工業規格)では40cm。これに対しサーモスでは、家庭にあるテーブルなどの高さを考慮し、70㎝からの落下試験を行っている。また、”まほうびん”のフタは、開閉操作9万回の過酷な試験に耐えること求めている。これは5年以上の使用に相当し、しかも9万回の時点で故障はおろかわずかな水漏れさえあってはならない。「製品に関連する法的な基準をクリアするのは当たり前で、サーモスではそれ以上の独自の基準で検査を行っています」と、その水準の高さには堀川も胸を張る。基準となるのはあくまで、お客様の暮らしの中における製品の使われ方なのだ。

せんユニットの取り付け・取り外しの耐久試験

塗装膜の品質検査

品質の番人は、事件の本質を探り出す探偵。

製造のプロ堀川が、品質管理を行う上でもっとも重要なことは何だと考えているのか。堀川は、現場、現物、現実の三現主義だという。「憶測や先入観にとらわれることなく、現場に行って、現物を見て、現実から判断するということは、品質管理の鉄則だと思います」

かなり以前のことだというが、堀川はこんな話をしてくれた。「ある製品の不良率だけが急に悪くなったのですが、どうしても原因がわかりません。そこで関係のありそうな部材の製造工場を訪ねてみることにしました。そうしたところ、該当する部材が屋外で保管されていることがわかったんです」堀川らが適切な管理をお願いすると、不良率はたちどころに改善したという。堀川はいう。「私たちが不良品をチェックする際には、その向こう側にある真の問題を見つけなければいけません。先ほどの例であれば、部材の品質以前に、管理の基準を徹底していなかったことが問題だった。現場に行ってみなければ、その本質にたどり着くことは難しかったでしょう」

一個の不良データから、製造のしくみに存在する本質的な不備を突き止める。まるで一編の推理小説のようなお話だが、ここからなぜサーモスが、堀川のような現場に精通した人物をこの分野に投入したのか、垣間見えてくるような気がしないだろうか。

“不良のないことを確認する”品質管理にこそ、意味がある。

堀川らは製品の品質を守るため、新潟での検査に加え、定期的に海外工場に出向き、実情をチェックしている。そうした活動が功を奏し、品質が大幅に向上した時のことだ。現地スタッフから「もう良品ばかりなので、一部の検査をやめてはどうか」という提案があった。これに対し堀川は、「工場の環境が未来永劫同じならそれもいいでしょう。しかし、工場では入荷する材料も、働く人も、動く機械も変化します。今後も同じという保証はありません。だから検査は必要なんです」と説明し、現地スタッフを説得したという。「不良品を発見することだけが検査の役割や目的だと思いがちですが、むしろ“不良のないことを確認し続ける”ことこそ重要なんです」と、堀川はその意義を強調してくれた。

このように品質の番人として、国内外に目を光らせる堀川にも、まだやりきれていないことがある。「製品のクレームの中には、間違った使い方をされて起こるものもあります。しかしそれは、お客様に正しい使い方を伝えきれていない、私たちにも責任があると思うんです。商品パッケージの表記や取扱説明書なども含め、そうした部分をどう改善していくか、今後はその辺にも取り組んでいきたいと思います」と、堀川は次のレベルの品質に向け、決意を新たにした。

なるほど、品質管理という仕事には、ものづくりと同じかそれ以上に深いこだわりが必要なのだろう。ものづくり以上に裏方の存在ではあるが、品質の屋台骨をしっかり支えるエキスパートたちの存在を、時には思い出してほしいと感じた。