THERMOS

Talk & Talk

もうひとつのサーモス。

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営業本部/営業推進課
マネージャー 松本さん

サーモス製品には、小売店などで販売しているボトルやマグ以外に、一般のお客様にはあまり知られていないもう一つの顔がある。レストランやホテル、学校給食など、プロの世界で使われている『業務用品』といわれる製品群だ。その中には、国内で大きなシェアを占めている製品も存在しているという。サーモスがこの分野に本腰を入れて取り組むようになったのは、今から二十数年前のこと。一人の営業マンの“ブレない”思い入れが、市場を切り開く原動力となった。

チラシ一枚からのスタート。

サーモスの前身となる日本酸素の魔法びん事業部に、松本望(現・営業本部営業推進課マネージャー)が入社したのは、今から二十数年前となる1990年のことだった。当時、サーモスではシャトルシェフの販売も始まり、一般向けの『家庭用品』を中心に成長期を迎えていた。だが松本には小さな危惧があった。企業にとってビジネスの柱が一本というのは危険ではないか、と。

「魔法びん事業にも多角化が必要」と考えた松本は、停滞していた『業務用品』に目を付ける。当時、業務用品はカタログもチラシ一枚しかなく、営業をする人もいないという放置されたビジネスと化していた。しかし若い松本は、そこに魅力と将来性を感じたという。最初は家庭用品と並行しながら、後に業務用品一筋で、松本は営業活動に取り組むことになる。

未知の市場をアナログ的に開拓。

松本は、業務用品のビジネスを拡大する上で、二つのことが必要だと考えた。一つは、流通を把握すること。業務用品のユーザーは、レストランや食堂に始まり、学校、病院、ホテル、社員食堂、老人施設、結婚式場、葬儀場、刑務所など多岐に渡る。しかも商品が流れる流通ルートは、それぞれ異なり見えにくい。そんな複雑で未知の流通を把握するため、松本が取ったのは、本人いわく、あまりにもアナログな手法であった。「足で調べるんですよ。たとえば地方に出張する時は朝一の便で行き、レンタカーを借りて病院だけでも十数カ所はまわるわけです。そんなことを最初の4、5年は続けていましたね」と、松本は笑う。

給食センターの保管庫に並ぶサーモス製品

もう一つは、製品ラインアップの強化だ。「これについては、マーケや開発、工場など、会社全体の協力が不可欠です。そんな中でも、私たち現場の営業部隊の意見をずいぶん取り入れてもらい、市場にあったいい製品が用意できたなと、ありがたく思っています」。こうした地道な努力が実を結び、松本らは販売のノウハウを蓄積。製品も充実し、業務用品市場におけるサーモスの存在感は徐々に大きくなっていった。

給食センターで活躍する高性能保温食缶

業務用品メーカーに必要な継続力。

家庭用品と業務用品ではサイズも違う。耐久性も必要だ。しかし、それらは本質的な違いではない。家庭用品には、毎年のように新製品が登場する。常に新しいもの、便利なもの、優れたデザインの製品を市場が望むからだ。これとは逆に、業務用品に求められているのは“継続”なのだと松本はいう。「学校給食センターなどの現場は、大規模になればなるほど、そのオペレーションを変えたがりません。だから、一度製品をお買い上げいただいたら、まったく同じ製品が5年10年と、繰り返し指名購入される可能性が高い。それが家庭用品との大きな違いです。よい製品を作ったらそれをいつまでも供給し続ける。それができるのが、本当に力のあるメーカーです。また、お客様への責任でもあると思います」と、松本は力説する。

サーモスの業務用品の中でも、とくに人気で長く使われているものが学校給食でおなじみの食缶だ。地方の学校給食は、まとめて給食センターで作られることが多い。配送に時間が掛かるため、保温力の高いサーモスの食缶が選ばれやすい。中でも寒冷地の給食センターでは、圧倒的なシェアを獲得しているという。お客様からは、温かい食事を届けられることで、給食を残す児童が減ったとの声も届いている。「とくにうどんやラーメンなど麺類の献立がある場合は、スープが冷めない容器として高く評価されているようです。お子さんたちにおいしいと喜んでいただけるのは、とてもうれしいですね」と、松本は目を細める。

街のどこにでもあるサーモスへ。

給食センターの保管庫に並ぶサーモス製品

業務用品のビジネスは、派手なヒット商品とも華やかなキャンペーンとも無縁の世界だ。そんな仕事の魅力について松本は、“継続”が形になる面白さだと答えてくれた。「様々な人と会い、流通を把握して一所懸命に販売の土台作りを続けてきました。それがある時実を結び、リピート販売として自然に売れていくようになるわけです。後から結果がついてくるということですね」。

松本がこの仕事を始めた時、サーモス製品が置いている飲食店はどこにもなかったという。それをどこにでもあるものにしたいと考えていた。今、その願いは叶いつつある。ごく普通の居酒屋や蕎麦屋のカウンターでも、サーモスのポットを見かけることが増えた。「自分の夢がどんどん実現していく。こんなに面白い仕事はないと思いますよ。これも自分たちが一つ一つブレない、逃げないでやってきたおかげだという自負は持っています」と、松本は胸を張る。

スタートから二十数年。業務用品はサーモスの屋台骨を支えるもう一つのビジネスに成長した。最初は一人だった松本の下にも、今では多くの力強い仲間が育っている。その仲間たちと力をあわせ、これからもサーモスの業務用品は、プロのお客様の信頼に応え、末永く選ばれ続けていくことだろう。