THERMOS

Talk & Talk

買いたい気持ちを
つくる技術。

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マーケティング部
広告宣伝課 簑島さん

マーケティングの仕事というと、数字満載の企画書に、横文字が飛び交う会議。そんな難しいイメージがあるかもしれない。しかしその目的はシンプルだ。“お客様に喜んで買っていただけるようなしくみをつくる”こと。たとえば、使いやすい新製品づくりや、楽しいコマーシャル、思わず目をとめてしまう売り場づくりなど、とても魅力的な仕事といえる。今回は、ある新製品を企画開発し、ヒット商品にまで育て上げた新進マーケッターの軌跡をお伝えするとともに、サーモスのマーケティング活動の一端もご紹介したい。

自由に組み合わせができるお弁当『eat』シリーズ

初めての新製品開発は“ランチ製品”

営業マンとしてキャリアを積んでいた簑島久男が、マーケティング部への異動を命じられたのは2011年。ちょうどアメリカ発のリーマンショックで、日本の景気が急速に悪化していた頃のことだ。当時サーモスでは、スープなどを保温したまま持ち運べる『真空断熱フードコンテナー』の売れ行きが伸びていた。それまでランチを外食やコンビニに頼っていた働く女性の間で、節約のため弁当を持参することが流行りはじめていたからだ。

この好機をつかむべく、簑島が所属した企画チームにも、フードコンテナーの新製品開発というミッションが下される。勝手の違う仕事を前に、簑島はこう考えた。せっかく新製品を出す以上、これまでの延長線上のものにはしたくない。メーカーとして新しい提案のあるものをつくりたい、と。それが、新人マーケッターとしての簑島の意気込みだった。

既存のものを組み合わせ、新しい価値を創造。

簑島らは、まず製品の使用状況を詳しくリサーチした。すると、見えてきたことがあった。「お客様はフードコンテナーとともに、おにぎりやパン、おかずなどを持参し、一緒に召し上がっている方が多かったんです」ということ。ランチのために複数のものを持ち歩く。わずかな不便だが、ここに簑島らはニーズの芽を感じた。「それを受けて、チームで議論した結果、出てきたアイデアが“組み合わせ”というものでした」

サーモスには、保冷バック付きの弁当箱『フレッシュランチシリーズ』という製品がある。これを、温かいものを入れるフードコンテナーと組み合わせてみたらどうだろう。これなら自由にランチをアレンジしたい消費者の使い方にもマッチし、便利で驚きのある製品が提案できるのではないか。簑島らはそう考えた。

ターゲットに合わせた製品へのこだわり。

方針は決まり、開発が始まった。もちろん、道程は順調なものではなかった。「初めてということもあって、設計や工場など、他部署との連携には苦労しました」と、簑島は当時を語る。とくに簑島らがこだわったのは、製品のデザインだった。「女性向けの製品であることや、フレッシュランチと組み合わせることを考え、4つのカラーを選びました。ところが、技術的な理由で意図した色が出せないというんです。そこは妥協したくなかったので、工場と何度もやりとりし、できるだけ忠実に再現できるよう努力していただきました」

こうして、新しい『真空断熱フードコンテナー』と『フレッシュフードコンテナー』の組み合わせによる『イートランチシステム』が完成する。弁当の内容や量により、サイズが変えられる保冷バックでスマートに携帯できる、簑島らの自信作だった。この新しいコンセプトは小売店にも顧客にも好意的に迎えられ、弁当箱としては異例のヒット商品となった。

巧みなパブリシティでブームの先頭へ。

この製品は派手な広告などを行ったわけではない。それなのに売れ行きが大きく伸びた秘密には、巧みなパブリシティ活動(製品を番組や記事で取り上げてもらうこと)もあったという。「フードコンテナーの保温機能を使うと、火を使わずにおかゆなどがつくれるのですが、そのことがTVで取り上げられ、本にもなったんです」と簑島。サーモスも協力した料理本には、表紙や調理シーンなど随所にフードコンテナーが登場する。これが製品のアピールに大きく貢献することとなった。

ブームの広がりは簑島らの想像を超える部分もあった。「意外だったのは、女性ファッション誌のCanCamに掲載されたことです。私たちは製品のターゲットを20~40代の働く女性や主婦と考えていました。ですがCanCamといえば、20歳前後の若い方が読者層です。こうした雑誌にも取り上げていただいたということは、製品の広がりをつくる上で、とてもいい影響を与えたと思います」と簑島は述懐する。

暮らしの中に、普通に存在するブランドをめざして。

簑島らの戦略は、見事に顧客の“買いたい気持ち”を刺激し、ヒット商品をつくることができた。しかし簑島は、一製品を超え、サーモスブランド全体の未来を見ている。「今は、子供が入学するからサーモスのボトルを買うといった感じですが、そうではなく、普段からサーモス製品が生活必需品として当たり前のように家庭にある、そんな身近なブランドとして成長できたらいいなと考えています」と簑島の夢は広がる。

そんな簑島だが、意外にも仕事のアイデアソースは、営業時代に廻った小売店の店頭にあるという。「店頭の製品やキャンペーンなどを見ていると、非常に参考になります」と簑島。夢は大きく、情報収集は地に足を付けて。営業マンの嗅覚と、マーケッターの視点を合わせ持った簑島は、果たして次にどんな製品や広告のアイデアで、私たちを“買いたい気持ち”にさせてくれるだろう。