

加藤:1998年に発売したスポーツボトルは、それまでの魔法びんとは全く違う、直接飲むボトルとして登場しました。
もともとはアメリカにいた上司から「アメリカでは水を持ち歩いて飲むという習慣があるから、それに合うような保冷専用のボトルを作ってみないか」と、ラフスケッチの描かれたファックスが送られてきたのが発端でした。
また日本でも当社独自のアンケート調査で、子供は冬でも冷たいものを飲んでいるという結果もありました。
それを受けて、当時開発部にいた私が、デザイン画を描いて、飲み口にキャップをつけるなどの工夫をして、ボトルを開発していきました。
加藤:そもそも魔法びんというのは、カップに注いで飲むもので、直接口をつけて飲むというのは、考えられないことでした。
また、お客様のほうでも「魔法びんには温かいもの」も入れられるという認識がありましたので、「保冷専用」ということを大きくうたいました。カタログやパッケージにはもちろん、製品にもシールを貼るなどして注意を喚起しました。
冷たい飲み物を入れて、ペットボトルのように直に飲むというスタイルの魔法びんが登場したのです。今までの魔法びん市場とは別のスポーツボトルという市場をつくりだしたのです。



加藤:実は発売した当初は、まだ、それほど受け入れられませんでした。それでもカラーバリエーションを増やしたり、ポーチをつけたりして、モデルチェンジをして出し続けました。
すると徐々に市場が伸びはじめて、2000年あたりからは販売店様からも、型番で指名が入るほど知れ渡るようになり、他のカテゴリーに比べても、マーケットが大きく伸びてきました。
それまで静観されていた他社さんも、この頃になって参入され、市場がさらに活性化してきました。
加藤:まず一貫して配慮しているのは、直接口につけるので、汚れに対するケアという点です。洗浄性に優れた形や機構を取り入れて衛生面にはこだわっています。
たとえばこの内部のパッキンなどは、前のモデルに比べて外しやすいようにできています(写真03)。パッキンを取り出して洗えるようにという配慮です。
キャップの部分でいえば、このバネ部分を金属ばねにすると、そこに汚れがたまったりするので、シリコンのリングにするなど(写真04)、お客様が衛生面で不安を感じないような構造の採用を心がけています。
飲み口も、切り口に角度をつけています。飲むときに空気を入りやすくして、飲みやすくするためです。この構造により飲み口内部に空気孔などをもうけなくてもすみ、内部の構造はシンプルでより洗いやすくなり、衛生面で安心です。
加藤:現在キャップを回して外すタイプ、ロックを外してワンタッチで開けるタイプの2種類用意しています。
回して開けるタイプのものは、構造が簡単でわかりやすいのがメリットです。自分でしっかり回して開け閉めするほうが安心するという方は少なくありません。
このワンタッチ式のタイプはボタンを押すとフタが開くのですが、飲んでいるときにフタ部分が戻らないように、ロックする仕組みになっています。
加藤:細かいといえば、このフタのキャップユニットの交換部品をお求めになるユーザーの方がたくさんいらっしゃいました。
調べてみると、グランドなどで放り投げたりなど、想像以上にかなり乱暴に扱われていることがわかりました(笑)。そのためキャップユニットが壊れていたのです。そこで現在のモデルでは、キャップユニットの形状を変えて、強度を出しました(写真07)。これで以前よりだいぶ壊れにくくなりました。
さらに、キャップを細長い形にしたことによって、回しやすさも向上しました。実際にお子さんが使っている様子をみていると、足の間にボトルを挟んで、回してあけているシーンも多く見かけます。中に残った氷をかじったりするんですね。キャップ部分がつかみやすくなれば、足の間に挟まなくてもすみます。

加藤:はい、学校の登校時や、土日のグランドなど、製品が実際にどう使われているのかはチェックしています。実際のユーザーの使用シーンは、製品開発の参考になります。
たとえばサーモスのボトルポーチは、洗えることがひとつの特徴なのです。外で使用するスポーツボトルだけにほこりまみれになりますし、洗えたほうが衛生的ですから。
ですが、以前グラウンドに調査にいったときに、ひとりだけポーチなしで使っているお子さんがいたのです。どうしても気になったので、聞いてみたところ「洗ったポーチが乾かなかった」というのです。毎日使うような場合には、たしかにそういうこともあるでしょう。
それなら洗ってもすぐ乾くもの、洗ったあと拭いてまた使えるものができないかと考えたのが、ジャケットタイプの製品です。これなら洗ってもふくだけですぐに使えます。さらにボトルをガードするのにも適していますし、デザイン面でのアクセントにもなっています。
加藤:スポーツジャグのシリーズも、実際にグランドでの様子を見てできた製品です。このジャグの市場は、他社製品が大きなシェアを持っていました。飲み口が露出していて、しかもそれを手で引き上げて使うタイプです。ほこりだらけのグランドで、汚れた手で飲み口に触れるのは衛生的ではありません。
そこで飲み口をカバーし、しかもワンタッチでオープンできるキャップユニットをつけたスポーツジャグを発売しました。おかげさまで今では非常に多くのお客様にお使いいただいています。
さらに「もっと冷えたまま使えるジャグがほしい」という声を受けて登場したのが真空断熱スポーツジャグです。真夏の時期に長時間使うといった用途では、やはり真空断熱のほうが保冷効果が高いですからね。
お客様が実際に使っているシーンを見たり、ご意見をいただいたりすることは非常に有益です。それがたったひとりからのご意見であっても、それを大切にして製品開発に取り組んでいます。
加藤:素材や製法などでできることはまだあると思います。実際、同じ1リットルの製品でも、前のモデルと今のモデルではサイズがだいぶ違います。素材や製法が進化したことで、直径は同じですがこれだけ小さくすることができました。(写真09)
デザイン面でもみなさんにカッコイイと思って、使っていただけるようなものになるようにいろいろアンテナを広げています。実際のユーザー世代や、その少し上の世代が好むアイテムなどは、積極的にチェックしています。スニーカーや時計などのアイテムを参考にして、デザインに取り入れることも少なくありません。
できるかどうかは別にすれば、持ち帰りの時にじゃまにならない、折りたたみできるようなボトルができたらいいですね。構造上は無理なんですが(笑)。
ただ、今後も製品を作っていくうえで、使い捨てで終わるような製品ではなく、ずっと使い続けていただける、愛着を持っていただける製品を作っていきたいと考えています。