Inteview with THERMOS vol.01

自転車専用ボトル「FFQ-600」開発チームに聞く発想・アイディア

サーモスの真空断熱技術が生んだ、
「自転車専用ボトル」

サーモスが発売した自転車専用設計の「真空断熱ストローボトル(FFQ-600)」。

サーモスならではのステンレス製魔法びん構造の高い保冷力を有し、様々なスポーツバイク用ボトルケージにフィットする専用設計のボトルだ。
この製品設計を担当したのは商品課の丸山高広。入社以来、スポーツボトルをはじめ、サーモスの様々な製品の設計にたずさわっている。自身もスポーツバイクユーザーという丸山から自転車専用ボトルの開発に注いだ熱意と、こだわりを聞いた。

企画段階からこだわり抜いた
ボトル開発。

ー設計の担当者として、企画の初期段階からどのように関わられたのでしょうか。

設計担当としてチームに入り、企画会議から参加しました。プロジェクトが始まったのが2011年8月。自転車のボトルケージに取り付けて使用するため、ケージへの着脱性とサイズ感が主な課題でしたが、設計上、様々な問題が生じ、開始から半年で一旦中断となりました。
開発を再開したのが2015年の9月。設計と試作を重ね、技術的、品質的な課題をクリアしていきました。様々な手法を用いて、機能性、デザイン性ともに細部までこだわり抜いた製品を作り上げました。

ユーザー視点で追求した
出し入れのしやすさ。

ーFFQ-600の設計で、大切にしたポイントを教えてください。

私も趣味でスポーツバイクに乗っており、週末は100㎞ほどホビーレーサーとして走っています。スポーツバイクユーザーとして、欲しい機能と使いやすさを考えて設計しました。
まず自転車専用設計のボトルとして大切にしたポイントは、ボトルケージから取り出しやすく、セッティングしやすい形状であることです。ボトルケージはメーカーによって仕様が異なるので、20種類以上のボトルケージのツメ(ボトルとの接触点)の寸法や位置など、設計上重要となる箇所をすべて測定し、様々なボトルケージに使用できる形状を検討しました。 特にボトル底面の形状はこだわって設計しました。ストレスなくセッティングできることを目指し、ボトル底面は丸みを帯びた形状になっています。底面のエッジにゆるやかなカーブをつけることで、ボトルケージとボトル底面の接触点をすべらせ、ケージにスムーズに出し入れできるようにしました。

ゆるやかなエッジでスムーズな出し入れを可能に。

シンプルで使いやすい設計を目指して。

ー使いやすい設計にするための工夫はありますか。

実際の使用シーンを想定して、形状から細部までこだわっています。
容量を決める上で、まず、ボトルの高さとボトルの太さを考えました。自転車のフレームに接触せずに取り出せる高さと、片手で握りやすい太さであること。全体の形状を決め、自転車専用ボトルの最適な容量として600mlにしました。
全体の形状としては、キャップユニットへ向かうにつれてシルエットがだんだん細くなっており、ボトルケージから取り出す時に自転車のフレームに当たりにくくしています。フレームと相性の良い形状を探るため、各社のフレームのサイズや形状もリサーチしました。どんなフレームが一番使われているのか、どのようなユーザーが使っているのかも調べ、試作を繰り返して決定したデザインです。
また、企画段階の設計では、シリコーンのボディリングはありませんでした。
機能性の面から見れば、ボトルケージのツメ(ボトルとの接触点)に引っかかりやすいようにボトル側の凹凸を深くすれば安定はしますが、外観とのバランスが崩れてしまうため、最適な形状の検討をしていきました。検討の結果、凹凸を最小限にすることでスッキリとした形状を保ちつつ、ボトルへの振動を抑えるために考案したのがこのボディリングです。

シンプルな表面加工。

ー表面加工についてはどのように検討されましたか?

当初からボトルケージとの擦れが想定されていたので、傷つきにくく、剥がれにくい表面加工としてハンマートンなどの粉体塗装等を検討しましたが、どんな色の自転車にも合うボトルにしようと、あえて塗装はせずに金属の質感を生かすという結論に至りました。
金属の質感を生かしたヘアライン加工は、シンプルな上、素手で扱っても指紋などが気になりにくいという点も決め手になりました。
また長く使用していただいてもロゴや品番は擦れて消えることがないよう、エッチング加工を採用しています。

冷たさと強さをキープする構造。

ー高い保冷力を実現するために工夫した点を教えてください

FFQ-600の本体は内筒と外筒の二層のステンレスで構成されていて、真空引きという工程で、二層のステンレスの間に真空層が作られています。真空層は熱を遮断するので、ボトル内の飲みものは外気温の影響を受けません。これが冷たさ・温かさをキープする魔法びん構造です。また、自転車の振動や強い力で握った時にも凹まないよう、強度解析を行い、外筒の最適な厚さを算出しました。

素早く飲めて、中身が飛び出さない。

ーワンタッチ・オープンのキャップ構造についてのこだわりを教えてください。

FFQ-600は、素早く水分補給できるよう、従来のボトルにあるロックリングをなくしています。ワンタッチで素早く開けることができ、さらに表面の凸部分がなくなるため見た目もスッキリさせることがきました。ただし、不用意にボタンが押されてフタが開くことがないよう、安全性にも配慮した形状になっています。
また、ボタンを指で押しやすくするため、押す部分に浅いくぼみを設けました。更にボトルを開けた瞬間の飲み物の飛び散りを防ぐため、ボタンを押すとフタが少し開いた状態で止まり、内圧を開放する設計を取り入れています。

こだわりの技術が生んだ、飲みやすさ。

ーストローボトル構造にした開発上の工夫について教えてください。

ボトルのフタは、ストローの弾性で開く設計にしています。ストローの素材に使用したシリコーンも、厚みや形状など何度も検証を繰り返し選定しました。
キャップの中にストローを収めるためのリブという部分があるのですが、ストローと接触するリブが薄いと、ストローに折り目がついてしまいます。そのため、FFQ-600のリブを厚くし、ストローに折り目がつきにくくなるよう、細かい設計まで気を使いました。
リブを含め、キャップは樹脂で作っていますが、樹脂は厚くすると歪みが生じます。その問題を解消するため、フタは二色成形、キャンプ本体はインサート成形という2種類の成形方法を採用しました。これは当社では初めて採用する工程となるため、工場の成形・加工担当者とミーティングを重ね、協議しながら設計を進めていきました。使いやすさはもちろん、デザイン性を高めるため、部品の作り方も含め細部までこだわった設計となっています。

高い技術を要するインサート成形

1mmもずれない、安定した品質。

ーボディリングの開発について教えてください。

ボディリングは、グローブをしたままでもボトルを握りやすくすること、また、走行中の振動によるボトルとボトルケージとの接触音を防ぐことを目的とし、シリコーン素材を採用しています。
このボディリングは取り外しができますが、外すとボディリングの厚みの分ボトルが細くなっています。ここにはバルジという加工方法が使われています。バルジというのは、水圧をかけて金属を加工する手法で、内側から圧力をかけて上下の膨らみを作り出しています。量産時に直径が1mmもずれることなく一定の寸法で作れるよう、工場での管理体制を整え、常に安定した品質を提供できるようにしています。

清潔で、漏れない。小さなパーツにも大きなこだわり。

ーパッキンについての工夫点を教えてください。

パッキンが正しく装着されていないと飲みものが漏れてしまうことがあるため、正しく装着できているかを目視で確認できるように、横からパッキンの凸部が見えるような構造にしています。また、取り付け忘れを防ぐため、キャップユニットとは異なる目立つカラーを採用しています。
全てのサーモス製品の特徴でもありますが、日々のお手入れを考慮して、パッキンやストローを取り外して洗浄できるようにしています。 さらに、パッキンの形状をFFQ-600にしか装着できないようにすることで、他のボトルをお持ちの場合でも、パッキンの取り違えがないようにしています。

高度な技術を盛り込んだ“攻め”の自転車専用ボトル

ーFFQ-600のどの部分がお気に入りですか?

スポーツバイクに乗る者として、シンプルでムダがないボトルのデザインが好きです。技術者としても小さなボトルキャップにインサート成形と二色成形という二種類の成形方法を採用し、ボトルの本体にはバルジ成形で機能面とデザイン面の両立を目指した所が、技術的にも“攻めている”と感じられ気に入っています。

おわりに

開発現場の熱い思いが詰まったFFQ-600。発売より5年以上前の企画段階から関わり、ついに完成させた開発設計担当・丸山は、さらにスムーズな水分補給を追求したいと語る。サーモスの自転車専用ボトルの飽くなき挑戦は続く。

丸山 高広
マーケティング部 商品戦略室 商品課
2011年1月入社。
入社後6年間にわたり商品の設計、開発を担当。技術者としてのアイディアを生かし、幅広い製品を手掛けている。
  • FFQ-600 製品情報
  • 企画担当者の声 商品戦略室 企画課:松井美華