木村東吉のサーモスを巡る旅 ~VanLifeの旅にはいつもシャトルシェフがあった

VanLife(バンライフ)をご存じでしょうか。バン(車)に生活に必要な物を詰め込んで寝泊りする、生活スタイルのことです。この造語はラルフローレンの元デザイナー、フォスター・ハンティントンが生み出したもので、彼は自由気ままな旅をバンとともに楽しみました。アウトドアの暮らしをこよなく愛する木村東吉さんもまた、VanLifeを楽しんでいます。
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キャンピングカーで旅をするVanLifeが流行しています。車に生活用品を載せて移動するVanLifeの旅は、気軽なように見えて、実は日常生活を見直すきっかけにもなるようです。木村東吉さんは、温かい食事を楽しむことができるシャトルシェフはVanLifeに欠かせないと言っています。
旅になにを求めるのか?
そう尋ねると、十人十色、様々な答えが帰ってくると思うし、そのすべてが正しい理由であると思う。
ボクの場合は、旅の主目的は日常生活を見直すことだ。
国の内外を問わずに旅を続けているが、旅から戻るといつも反省点がいっぱい出てくる。
それと同時に、日常への反省点もいっぱいこぼれだす。
双方に共通する反省点は、「自分にそこまでの道具、あるいは洋服が必要なのか?」ということである。
とくに長い旅では、荷物をかなりコンパクトに詰めなければならないので、ワードローブはかなり厳選することになる。それでも持っていく服の約3分の1は一度も着用しないで帰って来ることが多い。
そして旅から戻り、その着用しなかった服をクローゼットに戻す時、日常でストックしているワードローブの多さに閉口するのである。
2年前からVanLifeを始めた。
それまでにもキャンピング・トレーラーを引っ張って旅をしていたが、よりコンパクトなスタイルを求め、一台の古いVanを手に入れた。1996年製のフォードのVanで、手に入れた時には相当くたびれていた。
もっとも苦労したのは雨漏りで、コーキングを施しても、いろいろなところから雨漏りが発生する。3ヶ月ほど雨漏りと格闘して、その後、ブレーキキャリパー等の交換をし、エアコンのコンプレッサーの修理を終えた頃、ようやくまともに安心して長距離を走れるようになった。
実は今、この原稿を書いているのもVanLifeの旅の途中で、四国の高松のショッピングモールのフードコートにいる。
ショッピングモールのフードコートは旅先でよくお世話になる施設で、その理由はフリーWi-Fiが使えるということである。施設によっては親切にもPCを繋ぐ電源がテーブルに設置してあるところもある。もちろんランチも取れるし、夕食の買い物をついでに済ますこともできる。
約2週間前に河口湖の自宅を出発して、浜松、津、奈良、明石、赤穂、牛窓を経由して、瀬戸大橋で四国に渡った。
その間、道の駅やRVパークを利用しながら旅を続けている。
こうして旅を続けていると、まず電源の確保が毎日の必須項目になる。Vanには大容量の充電器を積んでいるが、使いたい放題に使用していると3日ほどで電力が枯渇してしまう。移動中にソーラーパネルによって再充電を行うが、ソーラーだけではいささか心もとない。従ってなるべく電源を繋ぐことができるRVパークに、定期的に宿泊することになる。
もちろん電力だけではない。水も必要だし、ガスも必要だ。
我がVanには5キロのLPのガスタンクを2本積んでおり、料理だけなら2ヶ月ほどは余裕で賄えるが、冷蔵庫や暖房にもガスを使うので、貴重なエネルギー源として加減を考えるのである。
日常でエコを心がけましょう! と声高々に叫ばれても、調理用のガスやIHヒーターの電力の節減を、家庭で細かく気にすることは少ないと思う。しかし、VanLifeを続けていると、それらにとてもシビアになるのだ。
そんなVanLifeの調理シーンで活躍する道具が、シャトルシェフである。
シャトルシェフの特徴は保温調理。一旦、鍋を沸騰させ、保温容器に移せば、2時間ほどで中の具材がトロトロに仕上がっている。
ボクが得意とするのが中華風シチューだ。
材料のメインは手羽中。
手羽中とベーコンをフライパンで色よく炒め、青梗菜やひよこ豆を煮込んだ鍋の中に投入する。味付けはシンプルで、中華スープの素と塩コショウ、それにニンニク。味の決め手は八角で、これを入れると、味がぐっと本格的に仕上がる。食べる前にごま油をちょろっと垂らせば完璧である。
例えば次の目的地に3時頃に到着したとする。すぐに調理準備を始め、すべての材料をシャトルシェフに投入する。
この旅でもっとも美しい夕陽は、牛窓の港で見た夕陽だ。
ここは「日本夕陽百選」にも選ばれており、瀬戸内海に浮かぶ島々の向こうに、燃えるような赤い夕陽が沈んで行く。
真っ赤な夕陽が海に沈む瞬間に、ジュッと音を立てる……というようなセリフが登場する映画を、若い頃に観たことがあるが、そんなエピソードが本当のような、真っ赤な太陽が海と島々に沈んで行くのだ。
Vanに戻るやシャトルシェフの蓋を開けて、ボウルに中華シチューを注ぐ。手羽の身が骨から崩れ落ちる。
夕陽の残像を車窓から眺めながら、熱いシチューを頬張る。
シンプルだが、何ものにも代え難い至福がボクの中で拡がっていく。
サーモスを巡る旅、いかがでしたか?
またどこかでお会いしましょう!
編集:オフィス福永
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