シングルオリジンの緑茶を愉しむ

日本人に一番なじみのある飲み物といえばお茶、緑茶でしょう。でも、身近にありすぎて案外知らないことも多そうです。今回は、緑茶の中の1ジャンル、「煎茶」にこだわり、全国各地からセレクトした茶葉を集めて販売している「煎茶堂東京」を訪ねて、奥深いお茶の世界を案内してもらいました。

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産地や品種によって微妙に味や香りが異なる緑茶。「煎茶堂東京」では、ブレンドではなく、単一農園・単一品種にこだわった<シングルオリジン>の煎茶を販売しています。厳選された茶葉を扱っているからこそ、ぜひ急須で淹れて味わってほしいと語る副店長・古川千鶴さんに、実際にお茶を淹れていただきました。

緑茶をよく飲むという人であれば、「やぶきた茶」という名前を聞いたことがあると思います。実は国内で作付けされているお茶の木(植物名:チャノキ)の8割近くが、「やぶきた」。スーパーの棚に並ぶ煎茶のパッケージには静岡や京都、鹿児島などの産地名が記されていますが、そのほとんどが「やぶきた」という品種から作られた煎茶です。
ところが、農林水産省に登録されているチャノキの品種は50種類以上あり、未登録の在来種を含めると100種類以上あると言われています。
つまり、日本にはめったにお目にかかれない貴重な茶葉の品種が宝の山のようにあるというわけ。

そんな貴重な品種の茶葉を1品種ごとに煎茶として扱っているのが、東京・銀座にある「煎茶堂東京」です。こちらのお店では、農園や生産者、品種や製法などを吟味し、1品種の茶葉=シングルオリジンとして販売。全国各地の生産者とのつながりを活かして約56種類の品種を扱っています。

© green brewing

▲036 MINAMIKAORI みなみかおり (30g)

それぞれのパッケージには、品種と共に甘み・旨み・苦みが☆の数で表され、産地や農園の名前だけでなく、茶葉が育った土地の標高、火入れの温度など、様々な情報が記されています。これもシングルオリジンならではのこだわりでしょう。

今回、おいしい煎茶の淹れ方を教えてくださったのは副店長の古川千鶴さん。
鹿児島県・頴娃町(えいちょう)の茶葉「みなみかおり」を試飲させてもらいました。
「みなみかおり」は甘みと渋みのバランスがよく、深蒸しの濃い緑色が特徴です。

▲古川千鶴さん。ワインのソムリエのように味の好みをお客さんから聞きながら、じっくり茶葉を選ぶのだとか
▲天秤量で茶葉を量ります

<お茶の淹れ方>
① 湯の量120mlに対して、4gの茶葉を使います。煎茶堂東京オリジナルの割れない「透明急須」は、哺乳瓶などに使われる樹脂製なので割れる心配がなく、お湯を注いでも本体が熱くならないのが特徴。

② 一煎目は旨みを愉しみます。低めの温度(70℃)のお湯を急須に注ぎ、1分20秒、蒸らします。タイマーや砂時計を使って、なるべく正確に計ります。最後の一滴まで残さず湯呑みに注ぎます。

③ 二煎目は渋みを愉しみます。80℃のお湯を注ぎ、蒸らし時間は10秒ほど。

④ 三煎目は、炒った玄米を加えて玄米茶に。お湯の温度は85℃とさらに高め。蒸らし時間は15秒ほど。

実際に飲んでみると、一煎目は爽やかで、軽やかな口あたり。鼻に抜ける香りが上品で、お茶の色も透明感がある美しい緑色です。
二煎目は、ワインで言えばフルボティのような、しっかりとした味。お茶の色は濃い緑で、一煎目とはまるで違う印象に驚かされます。
三煎目は玄米の香ばしい香りがプラスされ、ほっこり寛いだ気分になりました。

▲左から一煎目、二煎目、三煎目のお茶

「最近は、ご自宅に急須がないご家庭も増えているようです。たしかにペットボトルのお茶は便利ですが、ぜひ、急須でお茶を淹れてほしいですね」と語る古川さん。
丁寧に淹れたお茶は、単なる飲み物ではなく、和の文化を味わう贅沢なひと時。お湯を沸かし、急須でお茶を淹れて、愛用の湯呑みでゆっくりいただく……気ぜわしい毎日の中で、そういう時間をつくることが大事なのかもしれません。

煎茶堂東京では実店舗の他、オンラインショップでも茶葉を販売しています。注目は、お茶のサブスクリプションサービス。月に500円(+配送料300円)で、オリジナルの情報誌と2種類の試飲サイズのお茶がポストに届きます。どんなお茶が届くかは、開封してからのお楽しみ。

姉妹店の東京・三軒茶屋にある「東京茶寮」では、バリスタが目の前でお茶を淹れてくれます。

「忙しくて、のんびりお茶を淹れる暇がないという方には、高温のお湯で淹れることができて蒸らし時間も短い、釜炒り茶もありますよ」と古川さん。バリエーション豊かなシングルオリジンの茶葉が揃っているだけに、季節ごとに色々試してみて、お気に入りの銘柄を見つけるのも楽しそうです。

夏も近づく八十八夜♪ 皆さんも緑茶の奥深さを味わってみませんか?

▶︎煎茶堂東京 銀座店
東京都中央区銀座5-10-10
電話 03-6264-6864

▶︎煎茶堂東京 オンラインストア

▶︎東京茶寮
東京都世田谷区上馬1-34-15

<ライタープロフィール> 
三浦顕子(みうら・あきこ)
料理雑誌、ビジネス誌などの編集を経てフリーランスのライターに。実用書やビジネス書の他、生活情報系コンテンツなどの執筆も行う。

撮影:村上宗一郎(green brewing 提供以外の写真)
編集:オフィス福永

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