がんばらないで続けたい。無理なく始められる、貯金と節約のコツ

貯金に苦手意識がある人でも、お金を貯めるための方法はあるのでしょうか。ファイナンシャルプランナーの花輪陽子さんに、無理せず貯金や節約をするコツについて伺いました。

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花輪陽子(はなわ・ようこ)

花輪陽子

はなわ・ようこ

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。青山学院大学国際政治経済学部卒業後、外資系投資銀行に入社。2009年からFPとして独立。2015年から生活の拠点をシンガポールに移し、東京とシンガポールでセミナー講師など幅広い活動を行う。著書に、『貯金ゼロからでも大丈夫!夫婦で一生に必要なお金がしっかり貯まる本』(PHP研究所)、『夫婦で年収600万円をめざす!二人で時代を生き抜くお金管理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。
HP:https://yokohanawa.com/blog/

貯金や節約をしたい。だけどなかなか始められない……。そんな時は、何から手をつければよいのでしょうか。花輪さんは、「なによりまず、現状を把握することが大切」だと話します。

花輪陽子さん
花輪陽子さん

現状が見えていないと、どう変えればいいのかもわからないはず。なので、自分には毎月どのくらいのお金が必要なのか、何にいくら使っているのかを把握して、自身のお金の使い方のクセを知っておく必要があるんです。支出を可視化してみると、改善のポイントが見えてくるはずです。

なかでも最初に見直すとよいのは「固定費」なのだそう。その理由は?

花輪陽子さん
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支出のなかで最も割合を占めている部分から順に見直していくのがよいからです。多くの人にとって、それは「固定費」なんですね。

まずは月々の固定費を書き出すことから始めてみてください。書き出したら、無駄がないか、もっと金額を下げることができないかをチェックしてみましょう。それが終わったら次は、固定費の次に金額が大きくなりやすい「食費」や「交際費」を書き出してみることをオススメします。

とはいえ毎月の支出を書き出すとなると、ややハードルの高さを感じる人もいるかもしれません。ですが、花輪さんいわく「家計簿まではつけなくていい」とのこと。

花輪陽子さん
花輪陽子さん

もちろん家計簿をつけてもいいんですけど、生活費の可視化はあくまでも「毎月の支出の傾向」を知ることが目的。スマホのメモ帳に箇条書きでザッと書き出す程度でも問題ありません。

注意してほしいのは収入に対する固定費の「比率」だと言います。固定費の目安は「月収の50%まで」。

花輪陽子さん
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収入は人によって異なるので、すべての人にとってのベストな固定費が50%というわけではありません。ただ、収入が多くない人ほど、固定費の比率には気をつける必要があります。例えば、手取りの月収が20万円の人の場合、固定費が50%なら貯金の余地がありますが、固定費が60~70%にまでなると、貯金をするどころか、食費を削らなければいけなくなってしまう可能性も考えられます。

固定費の次に金額が大きくなりがちなのが「食費」です。この項目の比率は「収入の15〜20%が適正」なのだそう。

花輪陽子さん
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手取りの月収が20万円の人の場合、収入の15%は3万円。つまり1日あたり1000円程度の予算があることになります。

節約というと食事は自炊が中心というイメージが強いですが、花輪さんは「自炊に固執しなくても大丈夫」と話します。

花輪陽子さん
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今はワンコインで食べられる飲食店も多いですし、スーパーやコンビニで手頃なお惣菜が手に入ります。一人暮らしの方だったら、朝食だけシリアルなどの簡単な食事を用意して、昼と夜はコスパのよい中食や外食をチョイスすれば、むしろ自炊より安く、ロスの少ない食生活を送れることもあると思います。

たしかに、自炊が苦手な人が無理に自炊をしようとすると、かえってお金がかかってしまうケースも少なくありません。自分にできる範囲で、無理なく支出を抑えることが大切なのでしょう。

花輪陽子さん
花輪陽子さん

気兼ねなく外食を楽しみたい人は、食費と別枠で予算を作るのもよいと思います。その際は、月の外食回数や1回あたりの予算を決めておくと、管理しやすいですよ。

これまでのお話のなかで、固定費は50%、食費は15〜20%が適切なバランスと教えてもらいました。そうなると残りは30〜35%。理想の支出バランスはどんな比率なのでしょう。

花輪さんが考える、「無理せず支出を抑えて、かつ貯金もできる支出バランス」がこちらです。

花輪陽子さん
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服やコスメにお金をかけたい方もいれば、習い事や旅行、趣味にお金をかけたい方もいますし、外食を思いっきり楽しみたい方もいるでしょう。それぞれにお金をかけたいポイントは異なるはず。それらを一括して「お楽しみ費」としています。

重要なのは予算を設定すること。好きなことにお金を使いたいのであれば、あらかじめ予算を設定しておいて、そのなかで自由にやりくりをすればよいのですね。「お楽しみ費」として自由用途枠を設ければ、「ここに何を充てるか」を考える時間も楽しめそうです。

無理なく支出を抑えるためには、支出の適切なバランスを把握し、項目ごとに予算を立てて整理することが大切。では、貯金をするためのポイントは何でしょうか。

花輪陽子さん
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最低でも収入の10%は、貯金をする用に確保できるとよいと思います。もっとしっかりお金を貯めたいという場合には、支出のバランスを調整して、収入の20〜30%を目標にしてみてもよいでしょう。

注意したいのは、貯金する分のお金を先に確保しておくこと。「余ったら貯金に回そう」と考える方も多いと思いますが、大抵お金は余りません(笑)。

たしかに、貯金をしようと思っていたのに、気付いたらお金がない……という状況はよくあります。よっぽどの強い意志がないと、お金を余らせるのは至難の業。では、意志の強さに自信がない場合には、どうやって貯金をすればいいのでしょうか。

花輪さんは「先取り貯金」をオススメしています。

花輪陽子さん
花輪陽子さん

先取り貯金とは、給与のうち指定した貯蓄分のみを自動的に別口座へ移す方法です。代表的なのが、銀行の「自動積立定期預金」ですね。急に積立を始めるのが不安な場合は、解約がしやすいものから始めてみるのもよいでしょう。

ほかにも、毎年40万円までの投資信託が可能な「つみたてNISA」、私的年金制度の「iDeCo(個人型確定拠出年金)」も、自動で引き落としされるのでオススメです。フリーランスの方であれば、廃業時などの生活費を積立する制度「小規模企業共済」を利用するのもよいと思います。

ポイントは、貯蓄を「システム化すること」。難しいことを考えず、思考停止状態でもお金が貯まる仕組みを作ることが、貯金への近道なのだそう。

花輪陽子さん
花輪陽子さん

やっぱり「備えあれば憂いなし」です。例えば2年分の生活費があれば、転職や独立をする決断もしやすいですし、無理に仕事をしないという選択も可能になります。節約や貯金をすることで、もしもの場合に備えることは、そのまま将来の選択肢を増やすことにつながっているんです。

昔から「お金があれば幸せになれるのか」なんて命題もありますが、お金があれば未来の選択肢を広げることができるのは事実なのでしょう。

貯金のためのお金を確保するのは、言葉で言うよりも簡単ではありません。しかし、毎月の自分の支出額を可視化することなら、今月からでも始められそうです。すぐには結果に繋がらなくても、そうした行為一つひとつが、未来の自分への“貯金”なのかもしれません。まずは、固定費の書き出しから始めてみてはいかがでしょうか。

取材・執筆:早川大輝
イラスト:きどふみか
編集:ノオト

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