絶景「天空の茶の間」で心ゆくまでお茶を愉しむ

絶景「天空の茶の間」で心ゆくまでお茶を愉しむ

4~5月にベストシーズンを迎える日本茶。山間の茶畑に設けられたテラス「天空の茶の間」で、新茶を楽しんでみませんか。日本有数のお茶どころ・静岡の絶景スポットで、日頃の喧騒から離れ、贅沢なティータイムを過ごしましょう。

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日本有数のお茶どころ、静岡。全国の茶葉の約4割を生産しています。その静岡の山間に、見渡すかぎり緑の畝(うね)が続く美しい茶畑があります。そして、その風景をひとり占めしながら、おいしいお茶が飲める“特別席”があります。
「天空の茶の間」。標高350メートルの急斜面に広がる茶畑に突如現れる、ウッドデッキのテラス――“茶の間”です。まるで天空に浮いているかのような茶の間で、心ゆくまでお茶を愉しむことができるのです。

茶畑の名は豊好園(ほうこうえん)。豊好園の入り口でお茶の体験セットが入った黄色いリュックをもらい、「天空の茶の間」を目指します。
急な斜面を登って、少々息をはずませながらテラスにたどり着くと、緑豊かな自然が眼下に広がり、開放感たっぷり! どこからか鳥のさえずりが聞こえ、吹き渡る風の爽快さにハッとすること、しばし。風の音も雲の流れも、下界とは違うところに来たことを教えてくれます。
豊好園の園主・片平次郎さんによると、運が良ければ左手に富士山、右手に駿河湾を望むことができるとか。

片平さんは豊好園の三代目園主。早朝の朝焼けがイチ押しの景色と言います。
「この茶畑の斜面に朝日が当たるんです。朝焼けの富士は一見の価値がありますね。雲海に遭遇できる確率が高いのは3月頃。雨が降った翌日が狙い目です。ひぐらしの鳴く、夏の夕暮れの景色もいいですよ」

体験セットには、園主である片平さんが厳選した茶葉が2種類っています。そのほかポット、急須、湯冷まし、湯呑み、和菓子など、ひと揃い。また、自家製の紅茶=和紅茶も付いています。
今回いただいた緑茶は、葉を摘み取る前に遮光して栽培する「かぶせ茶」で、渋みが少なく旨みが強いのが特徴です。

最初の一杯は、片平さんに淹れていただきました。

煎茶は2種、パックに入っていて、飲み比べできます。赤いフタのボトルに入っているのが和紅茶。お茶菓子は地元の銘菓で、季節ごとに変わるそう。

75℃のお湯を湯呑みに注ぎ、温めます。

湯呑みのお湯を湯冷ましに移します。こうすると、お茶を淹れるのにちょうどよい温度に下がります。

茶葉を入れた急須に、湯冷ましのお湯を注ぎます。

1分ほど待ちます。

口に含むと、甘みと旨みが広がります。丁寧に淹れたお茶ってこんなにおいしいんだと実感。

豊好園は飲食物の持ち込みも自由です(ただしお酒は持ち込めません)。軽食や飲み物を持って、ピクニック気分で訪れるのも楽しそう。
今回はスリムなステンレスポットを持参。片平さんにおいしいお茶の淹れ方を聞きました。

ステンレスポットの容量は1ℓ。3~4人で集まってお茶会をする時などにぴったりです。
ティーバッグには緑茶が5g入っています。これをポットに3つ入れて、75℃程度のお湯に3~5分ほど浸すと、飲み頃になるそう。
「このポットの内部にはカゴ(お茶パック入れ)が付いているので、そこにティーバッグを入れます。お湯の中でティーバッグの茶葉がいい頃合いに開くのを待って、飲みましょう。ポットを振ったり揺らしたりすると雑味が出るので、やめましょう。今回は緑茶を使いましたが、紅茶やほうじ茶でもいいですよ」と片平さん。

「おすすめは冷茶ですね。魔法びん構造なので、夏は水出し用のティーバッグを入れて、冷茶を作ると重宝しそう。冷たい温度をキープしたまま飲めるなんていいですね。暑い最中の畑仕事に携帯するとうれしいかも」

煎茶の場合、ずっとティーバッグを浸したままにせず、抽出後は引き上げたほうが渋くなりません。

お茶を飲みながら、気心の知れた仲間とおしゃべりしたり、テラスでごろごろ、ほっこりしたり、絶景を写真に収めたり……ゆったりした時間が流れていきます。
こういうひと時を贅沢と言うのかもしれません。

どうしてこのような絶景のテラスが生まれたのでしょうか。
片平さんに聞いてみました。
「日本茶の魅力を知る体験イベントは、茶摘み体験など各地でたくさんあります。でも、うちはもっと単純にお茶の生産現場っていいなと思ってもらいたかったんです。そこで、茶畑の中にテラスを設け、周りの景色を眺めながらお茶を飲んでもらえればいいんじゃないかと。ちょうど斜面の一角に平たい土地があったので」とのこと。

4〜5月になると新芽が出てきて、茶畑があでやかな黄緑色に染まります。

それにしてもこれだけ広い茶畑を維持・管理するのは大変な作業に違いありません。
三代目として後を継ぐことに躊躇などはなかったのでしょうか。
「いやあ、全然。僕はめちゃくちゃお茶が好きですから。小さい頃からお茶が生活の中にあるのが当たり前という環境で育ったので、学校から帰ったら畑を手伝うのは当たり前。父の後を継ぐのも自然の流れでした」

豊好園では30品種にものぼる茶葉を栽培し、製造・販売しています。片平さんのお父様、豊さんが品種にこだわり続け、何十年にもわたってコツコツ植え替えをしてきた結果、シングルオリジンと呼ばれる一品種の茶葉が増えていったのだとか。
やぶきた、はるみどり、しずかおり、あさつゆ、さえみどり……丹精こめて育てられた茶葉は、希少なお茶として緑茶ファンの間で知られています。

「お茶の栽培では肥料をあげすぎないようにしています。茶の木そのものの個性を大事にし、慈しみながら育てています。土を耕して茶の木を植え、葉が摘める状態に成長するまで5年かかりますが、茶摘みのシーズンは1週間から10日間。お茶を摘んだあとは自分たちで製茶しています」

豊好園では合組(ごうぐみ)と呼ばれる茶葉のブレンドも行っていて、茶の間体験の受付場所ではオリジナルのお茶を買うこともできます。
「作物は足音が好き、と言いますよね。足しげく畑に通ったら、それだけバカおいしいお茶がつくれるんじゃないかと思って頑張っています」と片平さん。
お茶農家の心意気に触れて、足を伸ばしてここまで来た甲斐があったと思う1日になりました。

▷取材協力
豊好園 http://houkouen.org
「天空の茶の間」予約サイト(1日3組限定)
https://changetea.jp/chanoma/tenku-chanoma/
▷画像提供(朝焼けの風景、雲海の風景、新芽の茶畑)
株式会社AOBEAT
https://aobeat.co.jp/#business

取材:中尾祐子
撮影:土肥祐治
編集:オフィス福永

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