春から始める!大葉・パクチー・バジルなどの「食べられるハーブ」の育て方

木々や草花が芽吹き始める春は、ハーブを苗から育て始めるのにぴったりな季節。家で育てて、収穫して、料理などに活用できる「食べられるハーブ」の育て方の基本を、生活の木「薬香草園」のガーデンリーダー髙橋真紀さんに聞きました。

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生活の木
1976年より「自然」「健康」「楽しさ」のある生活を日本に提案・普及し続ける、原宿・表参道の地で生まれたライフスタイルカンパニー。埼玉県飯能市にある、メディカルハーブガーデン薬香草園(やっこうそうえん)では、6,500平方メートルを超えるガーデンで200〜300種に及ぶ四季折々の花やハーブが楽しめる。

ハーブを育ててみたい。そう思ったときに、まず大切なのが「どのような環境で栽培をするか 」です。

ハーブは、日当たりがよくて風通しがいい場所を好むことが多いです」と生活の木「薬香草園」のガーデンリーダー髙橋真紀さんは話します。

「とにかく日光と風通しが大切なんですね。さらに細かくいうならば、ハーブは各々の生まれ育った土地の気候を最も好むので、育てるハーブの原産地の風土を知っておくことも大事です」(以下、髙橋さん)

基本的に室外で育てるのがおすすめとのこと。ですが、居住環境によっては難しい場合もあるでしょう。

「そのような場合には、室内でも育てられる種類はないか、園芸店の店員さんに直接相談してみることをおすすめします。なかにはレモンバームやゼラニウムなど、日陰でも育てられるハーブもありますので、屋内にどの程度日光が差し込むかなどの状況を詳しく伝えると、より具体的なアドバイスをもらえるかもしれません」

ハーブ栽培をスタートするのに適しているのは、人間にとっても過ごしやすくて心地がよい「春」と「秋」だといいます。

特におすすめなのが、状態のよい苗を手に入れやすい4〜5月です。初心者の方がハーブ栽培を始める際には、種よりも、苗を購入して育てるほうが、ぐっと気軽にチャレンジできると思います」

苗を植え付けるときのポイントは「ハーブにとって心地のよい、水はけのよい環境を作ること」。

水はけのよい環境を作るポイント

  • 素焼きの鉢を選ぶ
  • 野菜やハーブ用の培養土を使う
  • 鉢の高さの10分の1程度まで軽石を入れる

「鉢の底に軽石を入れておくと、土の排水性や通気性がよくなり、根腐れを防ぐことができます」

根腐れはハーブが枯れてしまう要因のひとつで、水のやり方が原因で起こりやすいのが“毎日少しずつ水をあげて、土をずっと湿った状態にしていたら、根腐れが起きた”というケースです。

はじめてハーブを育てる人が、最も失敗しやすいのが水やりなんです」

水やりのポイントは「乾いたら、たっぷりとあげる」。鉢の下から水が溢れるくらい、たっぷりあげるとよいでしょう。これをしっかり守ることが、ハーブを健やかに育てていくための肝になります。

「『乾いている状態』の目安は、土が乾いていて、葉っぱはまだ元気なくらい。もしくは葉っぱがちょっとクテッとしてきていて、はりがなくなってきている感じ。微妙な変化に気がつくためには、よく観察してあげることが大事です。ハーブには『香りを楽しむ』という愛で方があるので、香りを楽しむ傍ら、様子をチェックしてあげるとよいと思います」

ハーブは根腐れ以外の原因でも、枯れてしまう場合があります。

「『水をやりすぎていて、日当たりが悪かった』『水が足りていなくて、日差しが強かった』など、複数の要因が重なって枯れてしまう……ということが多いようですね。そのような事態を避けるためには、先ほどもお伝えしたように、変化にいち早く気がついてあげることが大切です。

たとえば太陽光が強すぎると、葉が茶色く変色してしまうことがあります。そのような状況を『葉焼け』といい、特に夏場は注意が必要です。葉焼けをしてしまったら、その部分はカットして。日が当たりすぎないように、鉢を置く場所を移動したり、すだれを活用して日陰を作ってみたりするとよいでしょう

なお、葉っぱは栄養不足で黄色などに変色してしまうこともあります。

「ハーブはもともと野草なので、それほど多くの肥料を必要としません。肥料をあげすぎると、香りが薄くなってしまうこともあるんですよ。でも、葉っぱや茎の色が薄くなるなど、あきらかに栄養不足の兆候があるときには、肥料を与える方がよいでしょう

初心者でも育てやすくて、食材やお茶として楽しめるハーブを5種類、教えてもらいました。

奈良時代から日本で栽培されていたという大葉(シソ)は、日本の風土との親和性が高く、育てやすいハーブ。スパゲッティにたっぷり混ぜたり、刻んで冷奴にのせたり、しょうゆ、ごま油、おろしにんにくを混ぜたつけだれに漬けてみたりするなど、さまざまな料理に使いやすいです。

植え付けてから間もないうちに刈ってしまうと、成長が遅くなるため、しばらくは見守って、背丈が大きくなってから収穫するようにするのがおすすめです。

英語で「コリアンダー」、タイ語だと「パクチー」、中国語では「香菜(シャンツァイ)」と呼ばれます。刻んで料理の上にのせたり、サラダとして食べたりなど、活用法もさまざまです。

そんなコリアンダーを食用で栽培するには、花を咲かせないようにすることが大切。花が咲くとエネルギーを消耗しすぎてしまったり、葉がかたくなったりしてしまうのです。白くてかわいい花が咲きますが、花芽に気がついたら開花する前に摘み取ってしまいましょう

また、パクチーは内側から外側に向かって生えていくため、一番内側にある新芽を摘まないようにして、外側から収穫していくこともポイントです。

移植を嫌うため、苗から育てる場合には、根を崩さずに、苗のポットよりも2周りくらい大きな深い鉢に植え付けるとよいでしょう。

内側の新芽の部分は「成長点」と呼ばれていて、摘んでしまうと枯れてしまう可能性が高い

繁殖力が強く、交雑(異種交配)しやすいため、たくさんの種類があるのがミントの特徴のひとつ。種類の違いは主に「香り」の違いです。育てる際には、交雑を避けるために、1つの鉢に1種類ずつ植えるのがおすすめ。また、横にぐんぐん広がって伸びるため、大きめの鉢を使った方が安心です。

「身近なものに例えるのであれば、スペアミントは『歯磨き粉』、ペパーミントは『ガム』とおっしゃるお客さまが多いですね。清涼感のある香りという点は共通していますが、種類ごとに違うんです。近年流行中のカクテル『モヒート』はキューバ発祥で、本場では、キューバミント(別名 イエルバブエナ)というミントが使われています」(髙橋さん)

アジアの熱帯地域を原産国とするバジルは、温暖な地域では多年草として育ちますが、耐寒性がないため、日本では一年草(種を蒔いたその年のうちに発芽し、種をつけて枯れる植物)のあつかいになります。

たくさんの品種があるなかで、特に見かける機会が多いのがスイートバジル。いっぱい収穫できたらバジルペーストを作るのがおすすめです。こちらも花が咲くと香りが落ちるため、花穂に気がついたらすぐに摘み取った方がよいでしょう。

「レモン」と名のつくハーブのひとつ、レモンバーベナは「香水木(こうすいぼく)」とも呼ばれる、さわやかな香りが魅力のハーブ。お茶にして楽しむのがおすすめです。

葉っぱを指でこすると、指ににおいがうつる。その香りを楽しむのもハーブの醍醐味

収穫したハーブは、料理のほか、そのままハーブティーにするのがイチオシなのだそう。特に先ほど紹介した「レモンバーベナ」は「ハーブティの女王」といわれるほど。

採りたての生の葉をティーポットに入れて、熱湯を注いで、蒸らすとあっという間にハーブティーが作れます。1種類でも、数種類をブレンドしてみるのでも、どちらでも楽しめます。上級テクニックとして、ハーブティでコーヒーをドリップするのも、さわやかな味のコーヒーになるのでおすすめですね。そのほか、洗濯ネットなどの網目のあるものにハーブを詰め、浴槽に入れて、ハーブ風呂を楽しんでみるのもいいですよ」

洗濯ネットを使う場合は、お風呂用に新調するのがおすすめ

自分で育てたハーブを食べて楽しんだり、香りを存分に堪能したりして、自分自身を癒す時間。想像するだけでわくわくしてきます。ハーブを育て始めるベストシーズンはすぐそこに。今年はぜひ、自分の手が届くところからチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

イラスト:きどふみか
撮影・編集/ノオト
※レモンバーベナがお皿に載っている写真のみPIXTA

高橋 亜矢子

高橋 亜矢子

たかはし・あやこ

コンテンツメーカー・ノオトに勤めるライター/編集者。知らない土地やスーパーをうろうろすることと交通インフラが好き。よく使う調味料はお酢。

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