古今東西のお雑煮を知ろう!あなたの「ふるさとの味」はどれに近い?

新年に欠かせないお料理といえば「お雑煮」。地方色が豊かで、魅力あふれる日本の伝統的な食文化です。ご家庭ごとでも具材や味付けが変わるので、慣れ親しんだお雑煮以外はあまり知らない、という方も多いのでは? 今回は郷土料理に詳しい村越仁美さんに、各地のお雑煮について伺いました。

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村越仁美

村越仁美

むらこし・ひとみ

だしソムリエ、発酵食品ソムリエ、乾物マエストロなど複数の資格を保有する料理研究家。「食べ飽きないおいしさ」にこだわり、素材を生かしたシンプルで再現しやすい家庭料理やおやつを提案する。また、ふるさとの青森や自らにゆかりのある土地の食文化を研究し「ふるさとごはん」として作り方も発信している。
Instagram:@hitomi.ouchidegohan

お雑煮は平安時代の公家文化から生まれたとされています。当時は白味噌仕立てのおもてなし料理との位置づけでしたが、年月を経てお餅の形や味付け、具材など、地方ごとに変わっていきました。例えばお餅は、天下分け目の戦場となった岐阜の関ヶ原を境界線に、東日本は角餅、西日本は丸餅を使うのが主流です。味付けは、北日本や関東を中心に、中国、四国、九州地方では醤油をベースにしたすまし汁仕立て、近畿や中部地方では白味噌、福井県では赤味噌仕立てのお雑煮がよく食べられています。一方で、島根県などではぜんざい発祥とされる神社があることから、あずきを入れた雑煮を食べる地域もあります。

お雑煮はその土地に根付く食材や縁起の良い具材が使われていることが多く、一年の始まりに、家族への健康や幸せを願う特別な想いが込められているんだと感じますね。この魅力ある食文化が、未来へと受け継がれていくといいなと願っています。今回は地域色豊かな4種類のお雑煮をご紹介。うち2種類は、実際に作れるレシピ付きです。

関東のお雑煮は昆布や鰹節でだしを取り、醤油で味を調えたすまし仕立てが主流です。
江戸時代の武家社会では、失敗するという意味の「みそをつける」になぞらえ、味噌仕立てを避けたといわれています。具材は鶏肉や椎茸、にんじん、小松菜など彩りよく盛り付けます。また、焼いた角餅を使うことも特徴のひとつです。人口が急激に増えた江戸の町では、一つずつ手でちぎって作る丸餅よりも、切り分けられる角餅が使われるようになったと考えられています。のし餅は「敵をのす」という意味から縁起が良いと、武家社会で好まれていました。

関西地方では白味噌仕立てのお雑煮がよく食べられます。中でも大阪は「商い」=「飽きない」ための工夫から、元旦は白みそ、2日目は味を変えて醤油仕立てのすまし汁にする風習もあります。お餅だけでなく具材もすべて丸くきれいに形を切りそろえるのが大阪風。「角を立てず、丸く収まるように」という意味が込められています。ぜひ作ってみてくださいね。

  • 里芋(あれば海老芋) 2個
  • 【A】大根(あれば雑煮大根) 100g
  • 【A】にんじん(あれば金時にんじん) 60g
  • 丸餅 2個
  • だし汁(真昆布) 400ml
  • 白味噌(あれば西京白味噌) 60g~80g
  • 三つ葉 2本(5g)
  • 糸がつお お好みで
  • だし汁(真昆布)は鍋に水500mlと真昆布15gを入れて30分以上置く。
    中火で加熱し、沸騰する直前で火を止め昆布を取り出す。
  • 1:里芋は皮をむいて2cm幅の輪切りにし、塩(分量外・少々)で揉み、水で洗う。鍋に入れてかぶるくらいの水を加え、竹串がスッと通るまで弱めの中火で7〜8分茹でる。
  • 2:にんじんは皮をむいて5mm厚の輪切りに、大根は皮を厚めにむいて5mm厚の輪切りにし丸型で抜く。(お椀の底に敷く大きめサイズ2枚、飾り用の小さめサイズ2枚)
  • 3:鍋に【A】・だし汁を入れて弱めの中火で柔らかくなるまで5分ほど煮る。1を加えて2分ほど煮たら白味噌を溶き入れる。(ボウルに入れ、鍋の中のだし汁をお玉1杯ほど加えてよく溶く)
  • 4:別の鍋に丸餅にかぶるくらいの水を入れ、中火で2分ほど煮て柔らかくする。
  • 5:お椀の底に大根を1枚敷き、その上にお餅をのせる。具材と汁を入れる。三つ葉を結び、糸がつおと共に添える。

福岡県でよく食べられている博多風雑煮には、出世魚といわれるブリや、この地域の伝統野菜「勝男菜(かつおな)」など縁起の良い食材を使うのが特徴です。商人の妻たちは年始の挨拶に訪れる大勢の客人をもてなすため、あらかじめ具材を1人前ずつ串に刺しておき、素早く均等に提供する工夫も凝らしていたとされています。

縦に長い新潟県は地域ごとに多彩な食文化を持ちますが、村上市の「塩引鮭」を筆頭に、名産の鮭を使った料理が多くあります。過酷な海で生き抜き、生まれた川に戻ってくる鮭は出世魚、その卵であるいくらは子孫繁栄の縁起物。「年取り魚」として大晦日に鮭料理を食べたり、お雑煮に鮭を入れたりする風習もあります。下越地方でポピュラーなのは、醤油仕立てのすまし汁に鮭やいくらを入れた「親子雑煮」。具だくさんで華やかなので、こちらも作ってみてくださいね。

  • 角餅 2枚
  • 大根 50g
  • にんじん 1/4本(30g)
  • こんにゃく 1/4枚
  • ごぼう 1/4本
  • 里芋 1個
  • しいたけ 1枚
  • かまぼこ 1/4本
  • 塩鮭 2切
  • いくらしょうゆ漬 大さじ2
  • 三つ葉 2本
  • だし汁(昆布+かつお節) 500ml
  • 酒 大さじ1
  • 醤油 大さじ1
  • 塩 少々
  • 1:大根、にんじん、こんにゃくをたんざく切りにする。ごぼうはささがきにしてサッと酢水にくぐらせる。しいたけ、かまぼこは細切りにする。里芋は一口大に切る。三つ葉はさっと茹でて2本ずつ結ぶ。
  • 2:グリルorオーブントースターなどで角餅を焼いておく。
  • 3:塩鮭は一口大に切り、グリルで焼く。
  • 4:鍋にだし汁を入れ、大根、にんじん、ごぼう、里芋、こんにゃくを いれ、弱めの中火で加熱する。
  • 5:具材が柔らかくなったら、塩・酒・醤油で味を調えて火を止める。かまぼこと角餅を鍋に入れ、サッとくぐらせる。
  • 6:お椀に焼いた角餅と塩鮭、大根、にんじんを盛り付ける。だし汁を注ぎ、いくらしょうゆ漬けをのせ、三つ葉を添える。

私は普段から郷土料理の研究をしており、Instagramを中心にレシピを発信していますが、「ふるさとの味を作れてよかった」とコメントをいただくことが多いんです。みなさんそれぞれ思い出があり、味は記憶と密接に結びついているんだなと感じています。
今回ご紹介したお雑煮はほんの一部。地域ごとだけではなく、各ご家庭でもそれぞれ違います。今年のお正月はぜひご家庭で、バリエーション豊かなお雑煮を楽しんでみてはいかがでしょうか。

撮影:山下コウ太
編集:Nadia
執筆:田窪 綾
調理師免許を持つフリーライター。惣菜店やレストランで8年ほど勤務経験あり。食分野を中心に、Webや雑誌で取材やインタビュー記事作成などを行っている。

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