初夏から梅雨へ。日々を心地良く過ごすための「食養生」

初夏から梅雨へ。日々を心地よく過ごすための「食養生」

立夏を迎え、暦の上では夏になった5月。爽やかな新緑が気持ちの良い季節になりましたが、この心地良い気温や湿度の変化も、実は私たちの体と心に影響を与えます。漢方スタイリストの吉田揚子さんに、初夏から梅雨の時期を健やかに過ごすための養生について教えてもらいました。

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吉田揚子(よしだ・ようこ)

吉田揚子(よしだ・ようこ)

漢方スタイリスト。中医薬膳師。きたかまくら日々響主宰。「すこやかに、うつくしく、ゆたかに暮らす」をキーワードに、書籍や雑誌での執筆や監修、レシピ提供、セミナー講師、新商品の企画コンサルティングなど幅広く活動。2010年に「きたかまくら日々響 hi bi ki 」を設立し、体の内側から心と体を整える「ライフスタイルとしての漢方」を提案。『季節と暮らす12カ月 漢方養生ダイアリー』(日本文芸社)が好評発売中。
きたかまくら日々響:https://www.kitakamakura-hibiki.com

新緑や花々が美しく咲く季節。なんだか気持ちもウキウキしてきますね。とはいえ季節の変わり目は、急激な気圧や気温、湿気の変化によって体の中でのアンバランスが生じやすくなるので注意が必要です。初夏から梅雨へと移り変わるこの時期は、特に「多湿」と「高温」が私たちの体に影響を与えて不調が出やすいシーズンと言えます。

この時期は、つい冷たい水分を多めに摂ってしまいがち。外界の湿気だけでなく、実は体の内側にも余分な湿気が溜まりやすくなっています。五臓(肝、心、脾、肺、腎)にはそれぞれ苦手とする気候があるのですが、特に多湿を嫌う臓器は「脾(ひ)」とされています。

「脾」とは、飲食物を消化・吸収して栄養物質に変化させ、全身に送るという大切な役割をもつ臓器を指し、その機能の低下が起きると、食欲不振や消化不良、倦怠感などを引き起こしやすくなります。体内に余分な水分が溜まることで、むくみや体の重だるさを感じることもあり、むくんだところに冷えが生じることもあります。

「脾」がダメージを受けることで必要な栄養を摂れなくなると、「気」や「血」の不足も生じやすくなってきます。「気」は元気のもとであり、不足すると体のさまざまな機能に影響を与えます。「血」が不足すると、精神的に不安定になったり不眠が生じたりします。何をやっても楽しくない、やる気が出ないなど心が揺れやすくなるのは、「脾」の機能低下が引き起こす「気」や「血」の不足が原因の一つであると捉えることができます。

このような状況に陥らないようにするためには、体内に溜まった「余分な湿気」を排出して「脾」の機能改善をしていくことがはじめの一歩です。まずは「脾」の機能を改善して、必要な「気」や「血」をしっかり体にチャージするためのベース作りをしていきましょう。

食べ物としては、じわりと小汗をかいて体内の除湿を助け、消化促進に役立つ生姜やニンニク、スパイスなどの辛味食材や「脾」を助けて「気」を補い、余分な湿気を排出する力に勢いをつける鮭やカリフラワー、山芋やカボチャなどの食材がおすすめです。

養生法の一つとして、漢方茶を飲むという方法もあります。漢方茶というと、むずかしいイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、「ベースとなるお茶をしっかりブレンドして味を整える」「必要な素材を少量トッピングする」という手順を守れば、味のバランスがとれた、飲みやすくおいしい漢方茶になります。

今の時期なら、余分な水分を排出する性質をもつ「コーン茶」と「ハトムギ茶」を、「ベースのお茶」として各小さじ1ほどティーポットに入れ、そこへ「炒り黒豆(同様に余分な水分を排出)」を少々、「なつめ(気血を満たす)」1個を加えて熱湯300mlを注ぐ、という形です。2〜3分置けば、おいしいお茶のできあがり。ぜひ試してみてください。

真夏へ向けての体調管理のキーワードは「上手な出し入れ」です。「脾」が苦手とする湿気や「心」が苦手とする熱は速やかに排出しつつも、必要な栄養や水分はしっかり補っていくことを心がけてください。体の声を聞きながらバランスよく養生することが大切です。そもそも私たちの体は、自分に不要なものは排出して必要なものを補う力を持っています。その力を十分に機能させていくことで、心地良く日々を過ごすことができるようになります。

私たち人間も自然界の動物たちと同じように、自分自身に必要なものをちゃんと感じ取ることができます。季節の食べ物をおいしいと感じるのは、その季節の体のバランスを整える食べ物を受け入れようとする本能であると言えます。必要なものはおいしく、おいしいものは必要なもの。自分の体が今、何を欲しているのかを感じ取ることも大切ですね。

執筆:吉田揚子
編集:ノオト
イラスト:シマザキミユキ

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