スープジャーで世界一周 -酸味と辛さの合わせ技・中国のサンラータン-

忙しい毎日。朝起きて、家事や仕事に追われるうちに、気がつけばもう夕方。 どこか遠くへ旅に出たい! なんて思う日もありますが、残念ながらそう簡単に飛び出すわけにはいきません。 それならせめて気持ちだけでも広い世界を味わいたいもの。 ここでは世界各国のスープ料理を、その国の魅力やマメ知識と共にご紹介します。 スープジャーに世界中のスープ料理を閉じ込めて、旅してみませんか?

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年が明け、令和3年になりました。まだお正月気分が抜けないという人もいると思います。外は寒いし、食事となるとつい温かいおでんやカンタン鍋料理で済ませてしまいがち……
でも、そろそろ醤油ベースの汁物にも飽きていませんか?
そんなときに食べたいのが、お口の中がシャキッとするサンラータン。
刺激的な酸味と辛味に舌が喜び、汗をかき、とろみのあるスープに体がぽかぽか温まる、中国を代表するスープです。

中国華南の湖南省はサンラータン発祥の地として知られています。湖南省は、中国三大湖のひとつ、洞庭湖(どうていこ)の南に広がる地域で、中国建国の父・毛沢東のふるさとでもあります。
日本と似て温暖な気候で、花咲く春、酷暑の夏、紅葉の秋、雪降る冬と、四季の変化に富み、風光明媚な洞庭湖には中国全土からたくさんの観光客が訪れます。
唐代の詩人、杜甫は洞庭湖の北東にある楼閣を詩に読み、また、湖の南側に広がる景勝地は古くから山水画のモチーフとして描かれてきました。水墨画が好きな方にはたまらない牧谿(もっけい。宋代の禅僧)の描く山水画は、長らく我が国の画人たちの垂涎の的でした。

湖南省には世界遺産「武陵源(ぶりょうげん)」があります。
太古は海底だった場所が、何億年にも亘る地殻変動や侵食の末に現在の姿となったという武陵源。切り立った岩が林立する風景は圧倒的なスケールで眼前に迫り、映画『アバター』の舞台のモデルにもなりました。

もし武陵源に行く機会があったら、お勧めしたいのが「天国への階段」と呼ばれる999段の階段です。天門山に通じるこの階段は、岩にぽっかり空いた巨大な穴「天門洞」から一歩目が始まり、荘厳な眺めはまさに天へ通ずる門という名にふさわしいと言います。

ところで、中国料理に欠かせないのが中国茶。
洞庭湖に浮かぶ島「君山(ジュンシャン)」は、現在では岸とつながり島ではなくなってしまいましたが、ここは「君山銀針(ジュンシャンインヂェン)」という銘茶の産地。高級茶葉として有名で、めったに口にすることができない希少なお茶です。5グラムから売られています。

洞庭湖には長江から大量の水が流れ込み、この淡水の湖での漁業も盛ん。湖南料理と言えばよく淡水魚がまるごと調理された大皿がテーブルに運ばれてきます。
そして、その料理の特徴は、辛さにあります。
日本で「辛い中国料理」の代名詞といえば四川料理ですが、湖南料理も負けてはいません。
「四川人不怕辣、貴州人辣不怕、湖南人怕不辣(四川人は辛くても恐れず、貴州人は辛さを恐れず、湖南人は辛くないことを恐れる)」という言葉が中国にあるそうです。
「辛くないことを恐れる」なんて、湖南料理がいかに辛さを身上とした料理なのか、わかりますね!

代表的な料理のひとつが、剁椒魚頭(ドゥジャオユートウ)という魚の頭に唐辛子の発酵調味料「剁椒(ドゥジャオ)」をたっぷりのせた蒸し料理です。
四川料理の辛味は、花椒に代表される「麻辣」=痺れるような辛さ。それに対して湖南料理の辛味は「鮮辣」=唐辛子の鮮烈な辛さ、「酸辣」=酸味と合わさった辛さと表現されます。

そう、サンラータン=酸辣湯と書きます。文字どおり酸味と辛味が合わさったスープです。
このスープに麺を入れた「サンラータン麺」を食べたことがある人も多いのではないでしょうか。実はこの食べ方は日本特有で、本場・湖南では麺を入れず、ご飯と一緒に食べます。

作り方のポイントは、味の決め手である酢とラー油を最後に加えること。特に酢は煮立てるとせっかくの酸味や香りが飛んでしまうので、具材が煮えたあとに入れてくださいね。

とろみのついたスープに酸辣のパンチが効いてクセになる味わい。意外と手軽に作れるサンラータンを、スープジャーに入れて召し上がれ。

  • ・木綿豆腐 50g
  • ・椎茸 1枚
  • ・えのき茸 30g
  • ・タケノコ水煮 20g
  • ・鶏ガラスープ 150ml

【A】

  • ・醤油 小さじ1/2~1
  • ・酒 小さじ1/2
  • ・塩・こしょう 少々

【B】

  • ・片栗粉 小さじ1
  • ・水 小さじ1
  • ・溶き卵 1/2個分
  • ・酢 大さじ1/2
  • ・ラー油 好きなだけ

スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをしないで5分以上保温する。

1. 木綿豆腐は7mm角程度の細切りに、椎茸は軸を落として薄切りにする。えのき茸は石づきを取って3cm長さに切り、ほぐしておく。
2. 鍋にスープを入れ、沸騰したら1の具とAを加えて煮る。
3. きのこに火が通ったら火を止め、Bを合わせた水溶き片栗粉を入れてよく混ぜる。混ぜたら再度火を点け、中火で煮立てる。
4. 煮立ったら溶き卵を回し入れ、菜箸で鍋をひと混ぜして火を止める。最後に酢を加える。
5. スープジャーに入れ、お好みでラー油をかけて完成。

※保温後は6時間以内に一度にお召し上がりください。

 

ライター:松下梨花子
編集:オフィス福永

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