スープジャーで世界一周 -スパイス香るスタミナスープ・バクテ―(マレーシア)-

忙しい毎日。朝起きて、家事や仕事に追われるうちに、気がつけばもう夕方。 どこか遠くへ旅に出たい! なんて思う日もありますが、残念ながらそう簡単に飛び出すわけにはいきません。 それならせめて気持ちだけでも広い世界を味わいたいもの。 ここでは世界各国のスープ料理を、その国の魅力やマメ知識と共にご紹介します。 スープジャーに世界中のスープ料理を閉じ込めて、旅してみませんか?

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東南アジアに位置する、熱帯の国、マレーシア。
細長く伸びたマレー半島と、海を挟んだボルネオ島北部が国土です。
多民族国家で、人口約3300万人の約70%がマレー系、約22%が中国系、約7%がインド系の人々で構成されています。

それもあって、マレーシアにはさまざまな民族の食文化が融合したおいしい料理がたくさん!
マレー系はココナッツや香辛料を使ったスパイシーな料理が特徴。代表的なものに、ココナッツミルクで炊いたご飯に数品のおかずが盛られたプレート料理「ナシレマ」や、甘辛くスパイシーな串焼き「サテ」、サンバルソースという調味料が効いたスープ麺「ラクサ」などがあります。
中国系は広東料理など、華南地方の料理をマレー風やインド風にアレンジしたものが多く、マレーシアの風土にすっかり溶け込んでいます。

インド系は、南インドの豆や野菜を中心としたヘルシーな料理が主流です。
マレーシアの街を歩くと至るところにインド料理レストランがあり、なかでも朝食として好んで食べられるのが「ロティ・チャナイ」。薄く焼いたパイ生地のようなサクサクしたパンに、カレーのほかバナナや卵、イワシなどを付け合わせて食べます。

マレーシアが紅茶葉の産地でもあることをご存じでしょうか。
18世紀、熱帯の気候に耐えかねた英国人が少しでも涼しい場所を求めてたどり着いたのが、マレー半島中央部に広がる海抜1800mの高原地帯でした。
そこを「キャメロンハイランド」と名づけて、開発。その過程で、紅茶の栽培が始まったのです。

1929年、初の茶園として生まれたBOH TEA GARDENの紅茶は「幻のアジアンティー」と呼ばれ、ブランドとしても有名になりました。ボー・ティー茶園では紅茶工場の見学や試飲のほか、お土産を買うこともできます。

マレーシアの紅茶の飲み方は日本とはひと味違います。
ポピュラーなのが「テータリック」という飲み物。一見、普通のミルクティーですが、飲んでみるとその甘さにびっくり!
実は、牛乳の代わりに練乳を使っているのです。
味はインドのチャイに似ていますが、テータリックには基本的にスパイスは入りません。

「タリック」は「引っぱる」という意味。
なぜ引っぱるのかというと、淹れる過程で2つのカップを使い、カップからカップへ高低差をつけて注ぐから。写真のとおり、紅茶が上から下に勢いよく引っぱられているように見えます。
これを何度か繰り返すと、飲みやすい温度に冷ますことができ、味わいもよくなるそうです。

カフェを楽しんだあとは、屋台へ!
テータリックをはじめとしたドリンクから、ボリューミーなご飯やおつまみ、フルーツまで、食べたいもの飲みたいものがありすぎて、迷ってしまいそうです。

さて、今回ご紹介するバクテ―は、漢字で書くと「肉骨茶」。お茶の字が入っていますが、正体は豚肉のうまみと漢方の香りが詰まったスープです。

中国系の移住者が安価でスタミナのあるものを食べようと、骨の周りの肉を漢方の味つけでスープ煮にしたのがその始まりと言われています。
中国風の揚げパン「油条」を浸して食べると、よく合います。

使う肉の種類や部位、入れる具材、漢方などの味は、地域やお店によってさまざま。イスラム教の教えにより豚肉を食べないマレー系の人たちが食べるスープもあり、鶏肉を使ったものは「チクテー(鶏骨茶)」と言います。

今回作るバクテーは、豚のスペアリブに、にんにく、八角、コショウの効いたシンプルなタイプです。
まとめてもっとたくさん作りたい!という場合には、お肉を鍋に入れ、かぶるくらいの水を入れてスタートしてください。4人分くらいまでであればスパイスの量はそのままでOK。味や香りの出具合によって、取り出すタイミングを調整してみてください。お茶葉用パックにスパイス類を入れて煮ると、バラバラせずに取り出せます。

たくさん作って、残った分をスープジャーに入れてお弁当にするのもいいですね。
専用のケースに入れれば、持ち運びも簡単です。

  • スペアリブ(豚) 2本
  • にんにく 2~3片
  • 水 500ml

スパイス類

  • 八角(ホール) 1個
  • シナモン(スティック) 1本
  • クローブ(ホール) 3粒
  • 黒胡椒(ホール) 3~5粒

【A】

  • 中華だしの素 小さじ1
  • 醤油 小さじ1/2
  • オイスターソース 小さじ1/2
  • 塩 少々
  • 砂糖 少々
  • クコの実 2~3粒(お好みで)

スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをしないで5分以上保温する。

1. 鍋に水とスペアリブを入れ、軽くふつふつと沸いた状態を保ちながら、30分程度ゆでる。
2. 1の火を止め、浮いてきたアクと脂をおたまで取り除く。
3. 2にスパイス類と剥いたにんにくを入れて火にかけ、沸騰したら弱火にして1時間ほど煮る。途中味をみて、好みのタイミングでスパイスを取り出す。
4. Aを加え、塩と砂糖で味を調える。クコの実は水で戻す。
5.スープジャーの湯を捨てて4を注ぎ、クコの実をのせて完成。

※保温後は6時間以内に一度にお召し上がりください。

ライター:松下梨花子
スープの撮影:土肥裕司
編集:オフィス福永

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