料理人と酒造メーカーの日本酒対談!体が温まるカレー風味の酒粕スープ

冬になると飲みたくなるのが日本酒。今、まさにピークを迎える酒造りについて、料理研究家できき酒師の高橋善郎さんと朝日酒造マーケティング担当の髙橋英里さんに、対談していただきました。酒造りの過程で取れる「酒粕」を使った体が温まるレシピとともに、その様子をお伝えします。

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高橋 善郎

高橋 善郎

(たかはし・よしろう)

調理師免許/きき酒師/ソムリエ(ANSA)/野菜ソムリエ。素材の持ち味を活かした和食をベースに、エスニックからイタリアン、オーガニックと幅広いジャンルを得意とする。スポーツをこよなく愛し、トライアスロンの国内大会では年代別で優勝するほどの実力。スポーツメーカーやスポーツ・健康雑誌とのタイアップも多く手がけ、「食 ✕ 健康 ✕ スポーツ」を普及する活動も精力的に行っている。
HP:http://yoshiro-takahashi.com/

髙橋 英里

髙橋 英里

(たかはし・えり)

デザイン会社でのPRを担当し、大手PR代理店に9年半勤めたのち、2017年6月に朝日酒造株式会社に入社。朝日酒造でブランドコミュニケーションマネージャーに抜擢され、現在はマーケティング部で、広報PRを始め、イベント、サイト・SNS・オウンドメディアなどのデジタル、販促、メルマガなどコミュニケーション活動全般を担当。
HP:https://www.asahi-shuzo.co.jp/

▲料理家の高橋善郎さん(左)と朝日酒造マーケティング担当の髙橋英里さん(右)

家族や友人、仕事仲間と集まり、お酒を飲む機会も増える年の瀬。

暑い時期であれば冷たいビールもいいですが、冬真っ盛りのこの時期は、やはり日本酒がおすすめ。常温や温めて飲むお酒であることも理由のひとつですが、なんといっても12月はこの年の新酒が出始める時期であり、できたての日本酒を楽しめるからです。

高橋善郎さん
高橋善郎さん

寒くなると、温かい日本酒でほっとしたくなりますね。年末が近づくと、気分的にも日本酒が恋しくなりますし。

そうですね。クリスマスまでは他のお酒を飲む機会も多いですが、そのあと、年越しにかけては日本酒の気分が高まるというか。実際、お歳暮需要も重なり、12月は日本酒の売り上げが伸びるんです。

髙橋英里さん
髙橋英里さん

日本酒は、温めても冷やしても楽しめるお酒。さらに言うと、常温でも楽しめるのが日本酒の魅力です。お燗が恋しくなる冬は、そういう意味でも日本酒の多様な楽しみ方ができる季節と言えそうですね。

高橋善郎さん
高橋善郎さん

同じ酒蔵の同じお酒でも温度帯で味わいや楽しみ方が変わるのが、日本酒の面白いところですね。冬は温めて飲みたくなりますが、料理やシーンによっては冷酒だったり、常温だったり、日本酒の飲み方は本当にいろいろあります。

温度帯によって呼び名も変わりますからね。50℃で熱燗、55℃で飛び切り燗など。5℃刻みでいろんな呼び名があるんですよね。

髙橋英里さん
髙橋英里さん
高橋善郎さん
高橋善郎さん

温度帯や呼び名を細かく覚える必要はないですが、温度が違うと味が違って感じることはぜひ体験してみてほしいですね。日本酒の魅力にハマると思います。

たとえばお刺身をいただく場合は、白身魚なら冷えた日本酒、赤身で脂がのっている魚なら少し温めた日本酒がいいと思います。日本酒の温度で魚の脂が口の中で溶けやすくなり、より美味しくいただけます。

髙橋英里さん
髙橋英里さん

温度によって日本酒自体の風味が変わったり、料理に合わせて温度を調整したり、日本酒は本当に繊細なお酒で奥深いですね。

お鍋に日本酒を合わせるときも、お魚や野菜中心の鍋なら冷たい日本酒を、すき焼きのようなこってりしたお鍋なら温かい日本酒を、と飲み分けてみると、料理とお酒の楽しみ方が広がりそうです。

日本酒には、「大吟醸」や「純米」などの分類があります。どんな分類があって、それぞれの違いはどのような点なのでしょうか。簡単に教えていただきました。

大きく2つのポイントで日本酒は分けられます。1つは精米歩合。お米をどれくらい磨くか、で日本酒の種類が変わってきます。お米を削って残った部分の割合を精米歩合と呼び、精米歩合が50%以下の場合は「大吟醸」。60%以下は「吟醸」と呼ばれます。
それから醸造アルコールが添加されているかどうか、です。添加されていないものは「純米」とつきますし、添加されているものは「純米」がつきません。

髙橋英里さん
髙橋英里さん

朝日酒造の久保田シリーズで言えば、「久保田 千寿」は吟醸と書かれているので、精米歩合は60%以下、醸造アルコールを添加しているタイプの日本酒ということですね。

そうです。ラベルに記載されている種類をチェックしてみると、そのお酒のランクだったり、味のイメージだったり、どんなお酒なのかがだいたい掴めますね。ただ、これだけで日本酒を完全に分類できるわけでもありませんし、酒米の種類によっても味が変わるので、正直言うと日本酒は無限です。

髙橋英里さん
髙橋英里さん
高橋善郎さん
高橋善郎さん

僕は吟醸酒が好きですね。もちろん大吟醸も美味しいと思いますし飲むのですが、好んで飲むのは吟醸。地方に行った際はその土地の地酒をいただくのですが、吟醸を選ぶことが多いです。

それを聞くだけで、お酒好きだということがわかります(笑)。
吟醸はお米の磨かれる割合が少ないので、お米の風味がしっかり感じられますよね。それに対して大吟醸は、お米を半分以上磨いて造られるからこそ、とてもきれいなお酒になるんです。すっきりと華やかで、フルーティーですよね。人によってはお水のよう、と感じる方もいるくらいすっきりしているんです。
大吟醸の方が使うお米の量も多くなり、仕込みの時間もかかるため、値段もお酒としてのランクも高くなるのですが、だからといってそれが一番その人にとって美味しいとも限らないんですよね。

髙橋英里さん
髙橋英里さん
高橋善郎さん
高橋善郎さん

確かにそうですね。美味しさの種類や飲むシーンによって合う、合わないもあると言いますか。僕は吟醸酒が好きですけど、食前には大吟醸をいただくこともよくあるんです。英里さんがおっしゃったように華やかなお酒で、お酒だけでも美味しいですし、これから始まる食事がより楽しみになるような、気分を盛り上げてくれる作用もある気がして。

とても素敵な楽しみ方ですね。わかりやすく美味しいのは、大吟醸ではあります。なので、日本酒はあまり飲んだことないという方がいれば、まずは純米大吟醸を飲んでいただきたいです。香りも味もとてもいいので、きっと日本酒を好きになるきっかけになると思います。

髙橋英里さん
髙橋英里さん

吟醸酒好きな善郎さんから見た、朝日酒造の「千寿」の魅力を教えていただけますか?

高橋善郎さん
高橋善郎さん

これは懐が深いお酒ですね。最初に温度の話をしましたが、冷やして飲んでも温めて飲んでも美味しい。合わせる料理の温度も選ばない。食事と楽しむ吟醸酒と言われていますが、料理の味を邪魔せずに、料理を美味しくいただくためのようなお酒で、僕のお店でも人気なんですよ。

どんな料理にも合う、というのは和食に限らずということですか?

高橋善郎さん
高橋善郎さん

そうですね。 今は、食のジャンルの垣根を越えて日本酒を楽しむ方が増えていると思います。フレンチやエスニックに中華料理と日本酒というペアリングも、新しい発見があって面白いです。
日本酒はうま味成分が他のお酒と比べると段違いに多い。だから、どんな料理にも合わせやすいんだと思います。ワールドワイドで楽しめるお酒ですね。

「千寿」が食事に合わせやすい理由はどこにあるのでしょうか?

「千寿」は香りが控えめで、おだやかな日本酒。だから料理を邪魔しないんだと思います。最近は華やかさやフルーティーな香りがある日本酒の人気が高い傾向ですが、時に香りの良さは料理の風味を邪魔してしまうこともあるので。
あとは、久保田シリーズはキレを大事にしているお酒であることも関係があると思います。こってりした料理に「千寿」を合わせることでウォッシュ効果があり、料理を最後まで美味しくいただけるようになります。

髙橋英里さん
髙橋英里さん

今回は、英里さんに朝日酒造から11月14日に販売開始された酒粕もお持ちいただきました。

9月以降、まず精米から酒造りがスタート。そのお米を洗い、水に浸し、蒸して、麹にしたり醪(もろみ)に加えたりして、タンクに入れて発酵させます。仕込みスタートから約2か月後、醪を搾って酒と酒粕に分ける工程に入ります(上槽)。つまり、10月末ごろから11月にかけて、その年で初めての酒粕が取れることになり、搾りがピークになるこの時期は酒粕の「旬」ということになります。

▲醪を液体(酒)と固体(酒粕)に分ける工程
▲朝日酒造ではヤブタ式と呼ばれる圧搾機板を使って醪を搾るため、板状の酒粕になる

できたての日本酒を楽しみにされる方も多いですが、この酒粕も、久保田のファンの方からの支持が高い人気商品です。粕汁やお鍋にしたり、酒粕漬けを作ったり、酒粕甘酒にしたり、いろいろと楽しんでくださっています。

髙橋英里さん
髙橋英里さん
高橋善郎さん
高橋善郎さん

いい香りがしますね。
うちの父親は山形出身ですが、板状の酒粕をあぶって食べていましたね。

サッと火であぶって、おつまみにされる方もいますよね。
食物繊維が豊富なので、料理にうまく使えると体にもいいと思いますよ。

髙橋英里さん
髙橋英里さん
高橋善郎さん
高橋善郎さん

ビタミンB群も多いんですよね。だから酒粕ってお肌にもいいんです。

そうそう、酒粕を精製水で溶かしてお肌に直接つける酒粕パックもありますしね。

髙橋英里さん
髙橋英里さん
高橋善郎さん
高橋善郎さん

栄養面ではないですが、酒粕を入れてあげると少し日持ちもよくなるという肌感覚があります。僕のお店の料理だと、塩辛にちょっとだけ酒粕を加えています。作り置き料理にちょい足ししているんです。

そんな酒粕ですが、クセが強くて食べづらいと感じている方もいるかもしれませんね。今回は、「ちょっと足して使うといい」という善郎さんのアドバイスを活かした、日常的に作りやすくて飲みやすい、特製酒粕スープを教えていただきました。

高橋善郎さん
高橋善郎さん

粕汁というと、作るのが大変なイメージがあるかもしれませんが、おうちでよく作るスープにちょっと酒粕を溶かすような、そんな感覚で気軽に使えると、もっと酒粕料理を家庭で味わえるようになりますよ。
今回のレシピは、酒粕のクセが気になる方でも食べやすいよう、カレー粉と合わせてみました。ぜひ作ってみてください!

善郎さんのカレー風味の酒粕スープは、サーモスのスープジャーを使って作ります。材料をさっと煮込んでから、仕上げはスープジャーにお任せ。そんな手軽なレシピです!

  • ツナ缶(オイル漬け) 1/2缶
  • ブロッコリー 40g
  • しめじ 40g
  • トマト 1/4個
  • 水 150ml
  • 【A】
  • 酒粕 小さじ2
  • チキンコンソメ(顆粒) 小さじ1
  • おろししょうが 小さじ1/2
  • カレー粉 小さじ1/4
  • 塩、粗びきこしょう 各少々

【下準備】真空断熱スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをせずに5分以上保温する。

【1】ブロッコリーは小房に切り分ける。しめじは石づきを切り落とし、トマトは1cm角に切る。

【2】片手鍋に水を入れ、ひと煮立ちさせる。【A】を加え、混ぜ合わせる 。

▲板状の酒粕なら、写真くらいの量を目安に
▲ヘラを使って酒粕を溶かしてスープと混ぜ合わせる

【3】ツナ缶(オイル漬け)と【1】を【2】に加えてひと煮立ちさせたら、塩、粗びきこしょうを振る。お湯を捨てたスープジャーに入れ、フタをして30分以上保温しながら加熱する。

高橋善郎さん
高橋善郎さん

板状の酒粕はそのままだと溶かしにくいかもしれません。その場合は少量の熱湯と合わせて溶かしてから入れるか、電子レンジで加熱してやわらかくしてから溶かしてください。
酒粕の独特の香りが気になる場合は、一気に加えずに少しずつ足していき、量を調整してもいいですよ。

一般的な粕汁よりも、スパイス効果で酒粕を使い食べやすい善郎さんのスープ。しょうがも入っていて、食べた後は体が中からポカポカ。寒いこの季節にぴったりなあったかレシピです。

カレーの香りの中に、ふわっと酒粕の香りも混ざっていて、この組み合わせは初めてですね。すごく新鮮です。

髙橋英里さん
髙橋英里さん
高橋善郎さん
高橋善郎さん

酒粕はほんの少しでいいんです。少量でもいい香りがするし、冬のスープって感じになりますね。栄養面もプラスできるので、ぜひご家庭でも作ってみてほしいです。
カレー風味なら、お子さまも食べやすいと思いますよ。

野菜やツナに酒粕も入って、栄養満点なカレースープ。ベーコンやウインナーを加えても美味しいですし、スープジャーの容量を大きくできるなら、玉ねぎやセロリなどお好みの野菜を加えて具沢山で楽しむのもいいですよ、と善郎さん。

ご家庭で酒粕を料理に使う際には、どんな食材と相性がいいでしょうか? ほかにもおすすめの使い方があれば教えてください!

高橋善郎さん
高橋善郎さん

酒粕は、脂が多いものとの相性がいいんですよね。お肉なら豚バラ、魚ならブリ。脂が多ければ保温性も高まるので、体を温めてくれる効果も高まります。

そういえば板状の酒粕を天ぷらにしていただく、というのも聞いたことがあります。まだ食べたことがないのですが…善郎さん、作ってみてほしいです!

髙橋英里さん
髙橋英里さん
高橋善郎さん
高橋善郎さん

天ぷらですか! ぜひ試してみたいですね。海苔を挟んでも美味しそうな気がします。うちのメニューに加えようかな(笑)。
あとは、冬ならグラタンのソースに加えても美味しいですよ。

ちなみに、今回のスープは日本酒との相性はどうでしょう?

高橋善郎さん
高橋善郎さん

100%合いますね。酒粕を使っていますから、日本酒と合わないわけないです。

今回使っていただいたのは「千寿」の酒粕ですし、「千寿」と合わせていただくのはぴったりだと思いました。スパイスが効いているので、「千寿」と一緒に食事を楽しんだあとの、締めの一杯でもいいかも。

髙橋英里さん
髙橋英里さん

冬にぴったりな酒粕を使ったあったかスープと、搾りたての日本酒。家庭だからこそ、こうした自由な組み合わせで料理と日本酒を楽しむのも乙ですね。ぜひ皆さんも、冬ならではの味覚や日本酒を楽しんでください。

撮影:山下コウ太
編集:Nadia株式会社
執筆:糸井朱里
WEBやSNSのディレクター/ライターとして活動中。得意ジャンルはグルメ、子育て、女性のライフスタイル全般。

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