スープジャーで世界一周 ―おしゃれフレンチ・オニオングラタンスープ―
忙しい毎日。朝起きて、家事や仕事に追われるうちに、気がつけばもう夕方。 どこか遠くへ旅に出たい! なんて思う日もありますが、残念ながらそう簡単に飛び出すことはできません。 それならせめて気持ちだけでも、広い世界を味わいたいもの。 ここでは世界各国のスープ料理を、その国の魅力やマメ知識と共にご紹介します。 スープジャーに世界中のスープ料理を閉じ込めて、旅してみませんか?
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12月に入り、いよいよ冬も本番。
寒さが厳しくなるにつれ、ついつい背中を丸めがちになりますが、視線を上げれば華やいだ街の風景に心もウキウキ、ショーウィンドウを眺めるだけで楽しい気分に。そう、クリスマスはすぐそこまで来ています!
今回はクリスマスシーズンにぴったりの、オニオングラタンスープを紹介します。
クリスマスが近づくこの時期、フランス各地で見られるのが「マルシェ・ド・ノエル」、クリスマス市です。
日曜日に広場などで市が立つのは通年よく見かける光景ですが、この時期の市場はひときわにぎわいます。
店頭に並ぶのは、その土地の花々や、手作りのソーセージにチーズ。伝統的で素朴なお菓子やチョコレート。セーターやスカーフといった衣料品もあり、寒空の下、マルシェを歩くだけでも心が躍ります。
「メリークリスマス!」という意味の“joyeux noël!(ジュワイユ ノエル!)”の言葉を交わしながら、マルシェでの買い物を楽しむのがフランス流クリスマスシーズンの過ごし方です。
今回作るのは、そんなクリスマスの食卓にもよく合う一品、オニオングラタンスープです。
このスープの発祥の地については諸説ありますが、代表的なのがフランス南東部の都市、リヨン。パリからおよそ460km。ソーヌ川とローヌ川の、2本の川が出合う街リヨンは、フランス第二の都市で、ほぼスイスの国土面積と同じ広さがあり、古くから絹織物などの交易で栄えてきました。
北ヨーロッパと地中海地域をつなぐ要衝でもあることから、古代ローマの時代から発展、市街地には当時の史跡も残っています。
空の玄関口は、その名もリヨン・サン=テグジュペリ空港。『星の王子さま』を書いたサン=テグジュペリは、この街の出身なのです。飛行機乗りだった彼の名前がついた空港、なんともロマンティックですね。
とりわけリヨンが名高いのは美食の都としての顔。何世紀もの間、人やモノが盛んに行き交うなかで育まれた食文化は豊かで、「リヨンではまずいものを食べるほうが難しい」と言われるほど、魅力的なお店が軒を連ねています。
今宵は豪勢なディナーを、と思えばミシュラン星付きレストランへ。1965年から50年以上、三ツ星を獲得し続けているポール・ボキューズのレストランはあまりにも有名です。
気取らずおなかいっぱい食べたいという人は、「ブション」と呼ばれる郷土料理店へ。上流階級の屋敷で料理人を務めた女性たちが始めたとされるブションは、今も昔も庶民の味方。土地の人はそれぞれお気に入りのブションに行ってワイングラスを傾け、楽しいひと時を過ごすのです。
そしてなんといっても、リヨンの食文化のカギを握る食材が玉ねぎです。
フランス料理は地域によって多様な特色がありますが、そのなかで「リヨネーズ」=「リヨン風」と言えば、玉ねぎをたっぷりと使ったソースや料理のこと。これはリヨン周辺で玉ねぎがよく穫れたことに由来すると言われています。
玉ねぎそのものを味わうのにぴったりなのがオニオングラタンスープです。数あるスープのなかでも、具が玉ねぎだけという潔さはこのスープだけ!
生で食べると辛い玉ねぎですが、実は成分としてカウントされる糖質は果物並み。加熱すると辛味成分「アリシン」が分解され、隠れた甘みが引き出されるのです。
- ・玉ねぎ 大1/2個
- ・オリーブ油 小さじ1
- ・バター 5g
- ・コンソメスープ 150ml
- ・塩 少々
- ・バゲット(1cm厚さ程度のスライス) 1枚
- ・とろけるチーズ 15g
- ・パセリ 適宜
スープジャーに熱湯(分量外)を入れ、フタをしないで5分以上保温する。
1. 玉ねぎは薄切りにする。
2. 鍋にオリーブオイルとバターを敷き、玉ねぎを中火で焦がさないよう炒める。色がついてきたら火を弱め、飴色になるまでさらに炒める。
3. バゲットにチーズをのせ、トースターで焦げ目がつくまで焼く。
4. 2にコンソメスープを入れ、塩で味を調える。スープジャーに入れ、食べる直前に3のバゲットとパセリをのせて完成。
※保温時は6時間以内に一度にお召し上がりください。
ライター:松下梨花子
編集:オフィス福永
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