vol.17女子バレーボール
[前編]

小山晴那さん(18)相洋高校 女子バレーボール部所属清恵さん

172センチの長身で、中学卒業時には「神奈川県No.1セッター」とも噂された相洋高校女子バレーボール部の小山晴那(せいな)さん。チームの司令塔としてゲームメイクしながら、強靭なブロッカーであり、時には鋭いスパイクも叩き出す、大車輪の活躍をしてきました。V2リーグのトップを走る「ルートインホテルズブリリアントアリーズ」への加入も内定していて、春からプロとしての生活が始まります。同じく実業団のバレーボール選手として活躍してきた過去をもつ母清恵さんに、若くして自分の人生を切り開いていく娘へエールの言葉をもらいました。

筋金入りのバレーボール一家

我が家は、楓春(ふうか•20歳)、晴那(せいな•18歳)、香凛(かりん•16歳)の3姉妹、全員バレーボーラー。私も若い頃はカネボウ(現花王)の選手でした。結婚して3人が生まれた後も、趣味でママさんバレーをしていたので、その様子を見ていた子どもたちは自然とバレーボールに親しみを持つようになりました。
晴那は小さい頃サッカーにも興味を持っていたのですが、姉の楓春がすでに地元のクラブチーム「富士見バンビーナ」に入っていたので、ちょっぴり誘導して(笑)、小1からバレーボールを始めました。私も働いていたので、姉妹で別々のスポーツをやらせてあげることができなかったんですよね。

英才教育なんて考えていなかったのですが、富士見バンビーナのコーチはとても熱心で全国大会にも出ている強豪チームだったので、晴那は図らずもここでみっちり鍛えられることになりました。セッターに任命され練習が本格化した5、6年生の頃はきつそうでしたね。コーチに叱られることが多く毎日のように泣いていました。それでもバレーボール自体は好きなようで、辞めたいと言い出すことはありませんでした。

妹の香凛さんも相洋高校に進学。女バレの後輩でもある。一緒にいる時間が長いぶん家ではケンカすることも多いというが、プロ入りについて聞くと「お姉ちゃんのことはすごいと思う」と一言。

中3で身長が10cm伸び、選手として急成長

中学入学時は150cmほどしかなかったのですが、3年生の時にグンと伸び、選手としてひと皮むけました。JOCの神奈川県選抜に選ばれて、地元以外にも友達ができ、進学先を相洋高校に決めたのもこの頃です。将来を見据え、オリンピアンである大川千穂監督のもとでステップアップしたいという本人の希望がありました。

相洋高校ではありがたいことに1年時からレギュラー入りさせていただきましたが、いきなりアタッカーのレベルが上がったので、セッターとして急激にスキルアップしなくてはいけない大変な時期だったんじゃないかな、と思います。でも、大川監督の人脈力でオリンピック出場経験もある一流のセッター陣に特別レッスンしてもらうなど、贅沢な環境で育てていただきました。

私はというと、3人のアスリートのお腹を満たすので精一杯で気の利いたサポートは何もできず……。なにしろよく食べるんです。多い時は1回の食事でお米5合食べますし、唐揚げも2kgくらいはペロリ(笑)。でも、みんな好き嫌いなく野菜もなんでも食べて健康的に成長しました。

「料理は苦手なんですよ」と謙遜するがお弁当を見る限り、栄養も味のバランスも見栄えも良く、かなりの腕前。長年愛用するシャトルシェフで仕込んでいたのは晴那さんのお気に入り「ねぎと椎茸とわかめの白だしスープ」。

若いからできることを目一杯!

晴那は家であまり部活のことを話さないんですよ。キャプテンになってチームをまとめるのに悩んでいたことも、ママ友からから聞くまで知りませんでした。びっくりしたけれど、しっかり支えてくれる仲間がいるようで安心しました。

バレーボールって、強い人が集まれば勝てるっていうスポーツじゃない。チームワークがとても大事なんです。晴那はずっと仲間に恵まれてきました。なんでも話せて笑い合える仲間がいたから、しんどい時も乗り越えてこられたんでしょう。それだけでもバレーボールを続けてきてくれてよかったなと思います。

ありがたいことにVリーグで戦う「ルートインホテルズ」に内定が出て、春から親元を離れることになりました。一番の甘えん坊だった晴那が18歳で独立するのかと思うと親としての不安もありますが、若いからこそできるチャレンジがありますからね。なぜだか可愛がられる才能を持っているので、先輩にたくさん教えてもらいながらまずはコートに立つことを目標に頑張って欲しいです。

取材陣のためにお茶を用意するちょっとぎこちない晴那さんの手つきをみて、「だいじょうぶ?(笑)」と優しく突っ込む清恵さん。友達のような雰囲気もある歳の近い親子。

※2023年2月 公開