vol.19ダンス

中野唯奈さん(16)東京女子学院高校 ダンス部所属百合絵さん

2023年のイケてる部活ランキング(株式会社リクルート)では、サッカー、バスケに次ぐ3位。いま中高生に大人気の「ダンス部」が今回のアスリートのレシピの舞台です。中野唯奈さんは、最近全国大会などにも出場し、メキメキと頭角を表している東京女子学院高校ダンス部所属の1年生。おっとりとした柔らかい雰囲気からは想像できないくらい、力強いダンスが持ち味です。片や母百合絵さんは、満面の笑みが印象的な屈託のない女性。対照的な雰囲気の親子に話を聞くと、自ら厳しい環境に身を置き、ダンスで殻を打ち破ろうと頑張る唯奈さんの成長ストーリーが見えてきました。

繊細な唯奈のハートをダンスが支えてくれた

唯奈がダンスを始めたのは4歳の時。近所に主人の同級生でダンスの先生をやっている方がいて、「おいでよ」って誘ってくださったんです。中学校の保健体育の授業でダンスが必修化された時期だったので、「ちょうどいいね」って感じで何の気なしに始めました。

小学生の頃は、軽いノリで週1回のレッスンを続けていたんですが、途中で仲のいい友達が入会してきて雰囲気が変わりました。「負けたくない」と思い始めたようで、ダンスに対して向上心が出てきたんです。中学に入ると、幅広いジャンルを学ぶために週3回ダンス教室に通い、家でもよく練習していましたし、動画を見て研究したり自分のダンスをSNSにアップして人に見てもらったりすることもありました。

唯奈は繊細なところがあって、小5の頃、人間関係に悩んで学校に行きたがらない時期がありました。友達の意見を真に受けすぎてしまったり、友達を傷つけるんじゃないかと自分の意見を言えなかったりして、人知れずしんどくなっていたようです。そんな時もダンス教室には欠かさず通っていました。短期間で学校に復活できた理由の1つに、前向きになれるダンスの存在があったからだと感じています。

偏食の唯奈さん。食べられる野菜であるネギを混ぜ込んだ卵焼きはお弁当の定番メニュー

揉まれて大成長!? ダンス部に入って変わった

中3になって、東京女子学院高校に熱心なダンス部があると聞いて進路先として興味を持ち始めたんですが、私は正直、繊細な唯奈には厳しいんじゃないのかなって思っていました。女の子ばかりの大所帯のダンス部ですから、いろんな人間関係があるでしょう。競争も激しく悔しい思いをすることもあるでしょうし、耐えられないんじゃないかと思ったんです。本人も悩んでいましたが、最終的には自らの意志で進路を決定しました。

実際、入学したばかりの頃は、しんどそうにしている時もありました。ただでさえ新米の1年生として慣れない環境の中、部活のメンバーとは毎日のように一緒にいますし、かつてないハードな練習が続いて心身ともにきつかったと思います。でもしっかり乗り越えてくれました。

親の目から見ても、入学からこの数カ月の唯奈の成長ぶりには目を見張りました。15年の歴史の中で一番だと思います。中学では静かで目立たないタイプだったのに、今では同級生のメンバーに「先輩よりも練習場に早く行くために○時にここに集合しよう」と提案したりすることもあるみたい。まとめ役ができるようになるなんて驚きです。たくさん揉まれて、たくさん強くなってほしいな。ちなみに、普段の学校生活はとにかく楽しそうで、「女子高サイコー!」って言ってます(笑)。

ちょっぴり繊細な唯奈さんだけど、ダンス上達のための指導であるならば、厳しく言われても気にならないという

高校3年間の頑張りが、いつか人生の財産になる

唯奈はかなり偏食で、野菜は全般的に苦手。炭水化物とお肉は好きなんですが、元の状態を想像しやすい骨付き肉などは食べられません。なので、ひき肉をよく使います。カレーもキーマカレー風にして、あまり好きではないニンジンなどの野菜は細かく刻んで入れています。

私の手料理で唯奈が特に好きなものは、春巻きやハンバーグ、シュウマイなど。食べられるものが少ないのでお弁当もワンパターンになりがちなのですが、本人も「毎日同じ内容のお弁当にして」と言うんです。面白いですよね。

実は私も学生時代、陸上に明け暮れていたので、スポーツに打ち込む唯奈の辛さはよく分かるんです。同時にこの3年間を乗り越えたらそれが自信になって、人生のいろんなところで背中を押してくれることも知っています。唯奈は割と私になんでも話してくれるんですが、アスリートの先輩として、頑張ることの意義を伝えていけたらいいな。

高校卒業後のことはまだわかりません。将来ダンスにまつわる仕事に就くことは、今の所考えてないみたいですが、私は踊っている唯奈を見るのが好きなので、長く続けていってほしいなと思っています。

お母さんのお弁当は世界で一番安心できる、美味しい食べ物。リラックスして食事の時間を楽しめる





4歳からダンスを始め、現在は東京女子学院のダンス部で汗を流している中野唯奈さん。おっとりと微笑んでいてなんとも愛らしく、唯奈さんの周りだけ空気が柔らかくなっているような、そんな独特な雰囲気を持っている女の子です。それが踊り出すと一変! 俊敏かつダイナミックに身体を動かし、力強くてキレのあるダンスを見せてくれます。もともとは恥ずかしがり屋だったそうですが、ダンスで度胸や自己表現の大切さを身につけたのでしょうか、インタビュアーをしっかり見据えて、飾らない自分の言葉で答えてくれました。

毎日ママの同じお弁当がいいんです

大好きな春巻きとハンバーグと卵焼きが私のお弁当の定番メニュー。ママにも言ってるんですが、毎日同じでいいんです。例えば春巻きだったら、噛むとパリッとして中から濃いめに味付けられた具がジュワ〜っと出てきて「しあわせ〜♡」っていつも思います。

日替わりが坦々麺の時かカルボナーラの時だけは、学食で食べています。東京女子学院の学食は、それ以外のメニューも美味しくて安くて魅力的なんですけど、私は好き嫌いが多いので付け合わせとかに苦手なものが必ず入っていて食べられないんですよね。残してしまうと学食を作ってくれた方にも悪いし、野菜などを作ってくれた農家の方にも申し訳ない気持ちになってしまうから、変わらないママのお弁当が一番です。

ダンスは4歳から始めたんですけど、すごく恥ずかしがり屋だったんで、最初の頃はみんなで輪になって踊るのとか苦手だったことを覚えています。小2で仲良しの子がダンス教室に入会してきて、その子がすごく上手だったから「負けたくない」って気持ちで頑張るようになりました。得意なダンスはR&BとHIPHOP。逆に、ジャズとかバレエはターンで目が回っちゃうので苦手です(笑)。

手慣れた様子で“いつものお弁当”をつくる百合絵さん。唯奈さんは、家では弟と妹の面倒をよく見てくれる小さいお母さん的存在で「頼りにしている」そう

大人数でのダンスならではの過酷さと凄み

東京女子学院を知ったのは、中学の塾の先生に「ダンス部があるよ」って教えてもらったから。部活体験会に参加してみたら、すごくキツかったけど達成感があって「こういうダンスもいいな」って思いました。メリハリのある部の雰囲気も魅力的でした。

入学してからは授業と部活に専念する毎日です。木曜日と土曜日がオフで、それ以外の平日は16時〜19時まで。日曜日は一日練習の日もあれば、午後練習の日も。中学時代は自由な時間が比較的多かったので、お休みの日もゴロゴロしていましたが、いまは貴重な休みを無駄にしたくなくて、活動することが多いです。ダンス部の同級生や先輩たちと遊びに行くこともよくありますよ。

36人でやるダンスは、全員で動きを合わせるのが本当に大変です。大会の前には踊り込みをして完成度を高めていきますが、これがかなりしんどいんです。でもその分、みんなの動きがピタッと揃った時は気持ちがよく、楽しさで嫌なことが全て吹き飛んでしまいます。

憧れの先輩は、3年生でキャプテンの長澤実楓(みふ)先輩。頼り甲斐があって、ジャズもHIPHIPも上手で尊敬しています。3年生の先輩たちと踊れる期間はあとちょっとだから、悔いがないように頑張っていきたいな。

取材日(2023年8月中旬)は、目前に控えた「DCC全国高等学校ダンス部選手権」に向け最終調整のタイミング。練習後半には本番用の衣装を着用してリハーサルした

自分が変われば周りが変わることを実感した

高校に入って最初は戸惑うこともあったけれど、ある時、自分が思っている以上に相手に自分の思いが伝わっていないということに気づく機会があって、そこから変わりました。自分の思いを口にしていくことが大事なんですよね。自分から発信すると、みんなも安心してくれて、雰囲気が良くなっていくのを感じます。

高校に入って授業も楽しくなったかも。あんまり勉強は得意じゃないんですが、先生の教え方も上手だし、わからないことがあればその場で聞いています。クラスでの発言も中学時代より多くなりました。女子校だから男子の目が気にならないのが大きいのかも。全力の変顔とかもできるし(笑)、女子校に入って良かった〜!って思ってます。

いまの目標は、部員みんなで全国大会に出場して入賞すること。この前のダンスドリル選手権大会(2023)、うちのチームがHIPHOP⼥⼦部⾨のMedium編成カテゴリで3位入賞を果たしたんですが、大人数でのLarge編成部門でも入賞を目指しているんです。部員みんなが一丸となって、さまざまな全国大会で活躍できたら最高ですよね。辛い時に励まし合って、仲間と一緒にもっと上を目指そう!って燃えることができるのは、大人数の高校ダンス部の最大の魅力だと思います。

唯奈さんにとって百合絵さんは「友達みたいになんでも話せるママ」。時には「どんなメッセージで返信すれば気持ちが伝わるかな?」なんて相談を受けることも