vol.12サーフィン
[前編]

松岡亜音さん(14)NSA千葉南所属麻美子さん

松岡亜音さんは、日本サーフィン界の期待の星。昨年は、サーフィンの日本一を決める大会「ジャパンオープン」に出場選手最年少で参戦したことが業界の話題になりました。今年は若干14歳ながら2020サーフィン強化指定選手として招集され、先輩たちと最後の1枠を競い合っています。各方面でその活躍が注目されるスーパーガールは一体どのような食事をしているのでしょうか? 千葉・南千倉海水浴場の目の前にあるご自宅に伺い、サーフィンをこよなく愛するお母さんにお話を聞きました。

一杯のスープで生き返る。

海に入ると身体が芯から冷えます。冬はもちろんですが、夏でも早朝は冷えることも。だから一年通して、食事には温かいスープが欠かせません。休日の練習時や大会の朝に持たせるお弁当にもオニオンスープや味噌汁をつけます。お弁当の中身はなんてことないものなのですが、遠征先ではコンビニご飯になることが多いので、できるときには手料理を食べさせたくて。1.3リットルのお弁当箱ですが、サーフィンは運動量もあるので完食してくれます。

野菜はたっぷり、種類も多く使っています。本人も野菜好きで、特にトマトが大好物。毎日5〜6個は食べます。すごいですよね? 入れると喜ぶメニューは卵焼き。梅干しも大好きなのでよく入れています。

もう1つ意識しているのはカルシウムです。体格のいい外国人選手と渡り合うためにも、成長期のいま少しでも背が伸びて欲しくて。たくさん食べたらしっかり寝てもらうため、いつも「早く寝るよ!」と口癖のように言っています。

補食としてりんご、みかん、トマト、オニギリを持参。房総のフレッシュな野菜や果物から、疲労回復効果のあるビタミンをたっぷり摂取する。

厳しい父の指導に涙を流してきた。

わたしも主人もサーフィンが大好きで、ビーチの目の前に家を建て、毎日のようにサーフィンしていました。亜音も赤ちゃんの頃から海で過ごし、4歳で初サーフィン。お店(サーフショップを経営)に来るプロライダーたちに刺激を受け、小学校3年生から大会に出るようになりました。そこでもともとコンペティターだった主人がコーチになり、本格的に選手の道を歩み始めたんです。

4年生になると、大人のなかで(女子の競技人口が少ないので、18歳までひとくくりのクラス分けになることが多い)予選を通過することも出てきて、本人も上を目指すように。主人の指導も厳しくなっていきました。

二人はまさに師弟関係。亜音は一人っ子だからかマイペースで、競り合う場面で気持ち負けしてしまうことがあるのですが、幼い頃はそういうところを主人に厳しく叱責されて涙するようなこともしばしばありました。そんなときわたしは聞き役。主人に聞かれたときは出てこなかった言葉が、時間が経つと見つかるのか、ポツポツと話してくれるんですよね。

朝起きたらすぐに波チェック。自宅2階の亜音さんの自室からは海が一望できる。大会で上手くいかないときも、波が癒してくれる。

身を切る思いで武者修行へ送り出した。

5年生のとき、一人でカリフォルニアにサーフィン修行に行かせたのですが、それが亜音を大きく成長させました。“一人で”とは言っても、知人宅にお世話になったのですが、初めての海外旅行でしたので、行くときは半ベソ状態。でも、帰ってきたときはとびきりの笑顔でひと回り大きく見えました。 

本場アメリカで、自分と同じように頑張る同世代の女の子サーファーと友達になれたことが励みになったようです。翌年、再度カリフォルニアに渡ったときには「サンバム・メネフネ・サーフフェス」という大会で優勝し、世界で戦いたいという意識も生まれてきたように思います。

今回、強化指定選手に入ったことでお褒めの言葉をいただくこともあるのですが、奢ることなく、納得がいくまで頑張ってくれたらと思います。母として、またいちサーファーとしては、ケガなく世界中の海で楽しい経験をしてくれたら十分なんですけどね。

サーフィンを始めたばかりの頃。亜音さんは波をあまり怖がらず、度胸があったという。両親の予想を超えてレベルアップしていった。

※2020年3月 公開