サーモスWEBマガジン
本当に心地良くて、気持ちが良い、あなたの毎日に
ちょっぴり役立てるような暮らしのヒントをお届けします。
気になる夏の“におい”にさよなら。「汗トレ&においケア」の新習慣
厳しい暑さが続く昨今の夏、気になるのは汗のにおいやベタつきなどの不快感です。今回は、からだから出るにおいの成分について研究する関根嘉香先生に、汗と上手に付き合うための知識や、汗のにおいを軽減するための「汗トレ&においケア」の方法について聞きました。
関根嘉香
せきね・よしか
東海大学理学部化学科教授、皮膚ガス研究会会長。専門は環境と健康の化学。メディアを通じて広く「皮膚ガス」を紹介。主な著書に「皮膚ガスのはなし‐体臭は心と体のメッセージ」(朝倉書店)、「品質管理の統計学」(オーム社)。
知らない人も多い? 汗とにおいにまつわる3つのトリビア

暑さを感じたり運動したりしたときに生じる汗。この汗を生じさせているのが、全身に張り巡らされている「汗腺」と呼ばれる器官です。私たちのからだは、汗をかくことで体温を一定に保っています。
人の皮膚表面には、エクリン汗腺とアポクリン汗腺という2つの汗腺があります。暑いときや運動時に体温が上がると、エクリン汗腺から汗が出て皮膚表面の熱を奪い体温を一定に保ちます。このエクリン汗腺からの汗は、緊張や不安を感じたとき、辛い物を食べたときにも生じます。
からだにとって大切な機能を果たす汗ですが、ベタついたりにおったり、気になることも多いもの。適切な対策を始めるうえで知っておきたい汗とにおいの働きについて、トリビア形式で紹介します。
全身に分布している汗腺は、常にすべてが働いているわけではありません。季節や生活習慣によって「休眠」することがあるのです。
汗腺には、塩分などの栄養素を血液に再吸収させ、残った成分を汗として排出するろ過機能があります。正常にろ過された汗は、塩分が少なくサラサラとしていて、蒸発しやすいという特徴があります。
しかし、寒い時期や汗をかく習慣がない人の場合、汗腺が「休眠」する割合が高くなります。
「休眠」状態で急に暑くなると、汗腺が多くの汗を出そうとして負担が生じます。汗腺の働きが追いつかなくなるため、汗を作る過程で再吸収されるはずの塩分まで皮膚表面に排出され、ベタベタの汗になってしまうのです。
ベタベタの汗をかくことが多い人は、休眠している汗腺の割合が高い可能性があるといえます。

「汗くさい」などと言われますが、実は汗そのものにはほとんどにおいはありません。
汗臭の原因は、「皮膚ガス」です。
汗をかいたあとに放置してしまうと、皮膚表面に存在する常在菌が汗の成分を分解して、複数の「皮膚ガス成分」が発生します。これらの皮膚ガス成分が汗くささの原因です。汗臭は、納豆や蒸れた靴下のようなにおいがするといわれます。
汗臭と間違われやすいにおいとして「疲労臭」があります。
夏場は暑さによる疲労も重なりますよね。ストレスや疲労が蓄積したり、肝臓の機能が低下したりすると、血液中のアンモニア濃度が増して皮膚ガスとして放出されます。これが「疲労臭」と呼ばれるツーンとしたにおいの原因で、年齢や性別に関係なく発生します。
つまり、夏場は汗をかいたことによる「汗臭」と「疲労臭」の2つが同時に発生しやすいのです。
汗トレ&においケアをはじめよう
暑い夏の時期、気になる汗臭や疲労臭を抑えて快適に過ごすには、サラサラの汗をかくための「汗トレ」と、汗や疲れの「においケア」をセットで行うことが効果的です。
ベタベタの汗や汗臭の基本的な対策は、汗腺を鍛えること、つまり汗をかく機会を増やすことです。逆説的ですが、汗臭が気になる人は汗をかく習慣をつけるといいでしょう。
また汗をかいたあとにそのまま放置するとにおいのもとになります。汗をかいたら、ぬれたタオルや汗拭きウェットシートでこまめに拭きましょう。乾いたタオルで拭くと必要な水分まで奪われ、体温が下がらずにさらに汗をかいてしまうので、ぬれたもので拭くのがおすすめです。
一方、疲労臭については、取るべき対策が異なります。
疲労臭は体内で生成されてガスとして排出されるため、洗っても消えません。疲労がたまったらしっかりからだを休め、バランスのよい食事をとって生活リズムを整えることが大切です。
以上を踏まえ、簡単で習慣化しやすい汗トレ&においケアを紹介します。

普段運動する習慣がない人でも簡単にトライできるのが、「インターバル速歩」です。
「インターバル速歩」は、早歩きとゆっくり歩きを交互に3分ずつ行うことを1セットとして1日5セット以上、30分ほど歩く運動です。日常的に取り入れられる軽い運動ですが、血流がよくなり、汗腺がよく働くようになって汗の量も増えます。運動のあとは、軽くシャワーを浴びると汗臭リスクが下がります。
また、運動で汗をかいた後には水分補給も忘れずに。もちろん水や麦茶、スポーツドリンクなどでもよいですが、サラサラの汗をかくには牛乳がおすすめです。
牛乳などの乳製品に含まれるタンパク質は、血液を作るのに必要なアルブミンの材料となります。運動の後にはコップ1〜2杯の牛乳を飲むと、サラサラの汗をかきやすくなりますよ。

夏は、暑さや強い直射日光によってストレスや疲労が蓄積してしまいます。猛暑による疲労臭を効果的かつ簡単に防ぐ方法が、「日傘を差すこと」です。
自治体と共同で行った調査では、夏の晴れた日に日傘を差すと熱ストレスが和らぎ、疲労臭の原因となるアンモニアの発生量が減少することがわかりました。日なたを日傘なしで歩いたときよりも、日傘を差して歩いたときの方が、アンモニアの発生量が1/2以下に減少したのです。また、日傘を差すことで汗の量も抑えられます。外出時は日傘を差し、できれば木陰などを歩いて直射日光を避けるとよいでしょう。これは熱中症対策としても有効です。
もう1つの疲労臭対策として挙げられるのが、「腸内環境を整えること」です。
疲労臭は腸内環境とも密接に関係しています。疲労臭は腸内で生成されるアンモニアが原因の1つとなりますが、私たちの実験では、ビフィズス菌を増やすオリゴ糖(ラクチュロース)を継続的にとり腸内環境を改善することで、皮膚から発生するアンモニアが減少することがわかりました。つまり、日常的にヨーグルトなどを食べて大腸内のビフィズス菌を増やすことによって、疲労臭を抑えることができると考えられます。
一方で、ファストフードやニンニクなどにおいの強い食べ物のとり過ぎは食品由来の皮膚ガス発生の原因になるため、注意が必要です。
そのほか、汗臭の対策としては「朝にシャワーを浴びる」、「制汗剤を使う」、疲労臭の対策としては「規則正しい生活習慣を意識する」ことなどが挙げられます。
夜に入浴した場合も、寝ている間に汗をかきますから、朝軽くシャワーを浴び直すことは汗臭対策になります。また、制汗剤は一時的に汗の分泌を抑制するような効果があるため、頻繁に使用することは避けたいですが、大事な会議の前など、一時的に使用するぶんには有効です。
いずれの対策でも心がけたいポイントは、基本的な生活習慣を意識して整えることです。バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動習慣を意識して汗腺を働かせ、疲労をためないようにしましょう。
手軽な汗トレ&においケアで夏のにおい悩みを解消!
夏の暑い時期の気になるにおい。意外にも、ウェットシートで拭く、ウォーキングをする、日傘を差す、といった簡単な方法で対策できることがわかりました! 夏のにおい悩みを改善したい方、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。
執筆:早川奈緒子
イラスト:伊藤健介
編集:アーク・コミュニケーションズ

