vol.11ラグビー
[前編]

廣瀬雄也さん(18)東福岡高校ラグビー部所属道子さん

9月20日にラグビーW杯が開幕し、アジア初の開催国・日本のラグビー人気が過熱しています。この節目の年にラグビーの強豪・東福岡高校の主力選手として花園日本一を目指しているのが、キャプテン・廣瀬雄也さん(3年)です。激しいタックルに負けない強じんな身体と、トライを奪う俊敏性。その両方が必要とされるラグビー選手の身体づくりは、家族のサポートなしでは成り立ちません。元トップリーガーの父と、元ソフトボール国体選手の母を持つ廣瀬さんの食育と、仲良し一家の温かいエピソードを紹介します。

毎日かならず言ってくれる「ごちそうさま」の言葉。

ラグビー選手の身体って、ただ大きければいいというわけではないんですよね。雄也が東福岡に入学したとき「とにかく身体を大きくするんだ!」と意気込んで、2合メシを毎日食べていたんです。体重がどんどん増えていったのはよかったのですが、そのぶん走れなくなってしまって。慌てて食トレを見直したことがありました。

今ではちゃんと自分で考え、トレーニングをし、自己管理ができるようになったので、私は美味しいご飯をつくるだけ。帰宅が21時ごろと遅いので、消化が良くて栄養のあるものを楽しく食べてもらいたい。そのことだけを考えて食事を作っています。

特別なことは何もしていないけれど、空っぽになったお弁当箱を、毎日必ず「ごちそうさま」って言葉を添えて返してくれるときは「どこでそんな礼儀を覚えたの?」と驚きもありつつ、とてもうれしい気持ちになります。「ご飯が多いのに、今日も頑張って食べたね」って思います。いつのまにか大人になっている雄也を、頼もしく感じています。

お祖母様から受け継がれた廣瀬家特製のご飯のお供。左は豚ひき肉、砂糖、ニラで作った油みそ、右はひじき、じゃこ、塩昆布、ごま、かつおぶしが入ったふりかけ。栄養満点で雄也さんの大好物でもある

おじいちゃん、おばあちゃんの「味」が大好き。

雄也の丈夫な身体は、おじいちゃん、おばあちゃんが作った、と言ったほうが正しいかもしれません。ラグビー選手だった主人の母が、大阪から美味しいお肉を冷凍していっぱい送ってくれるのです。雄也はこのお肉が大好き。お弁当にいつも入れていました。

また、私の実家・宮崎からは白菜やナス、トウモロコシなど新鮮な野菜がいっぱい届きます。野菜嫌いだった雄也は「おじいちゃんが作る野菜は他と違う!」と言って、焼きナスが大好物になりました。白菜は餃子にすると甘くて美味しいので、土曜日の夜の定番になりました。大阪のお肉と、宮崎の野菜。おじいちゃん、おばあちゃんからの“差し入れ”で、うちの子供たちは大きくなったのです。

おばあちゃんの味、といえば私の母から教わった「ひじき、じゃこ、塩昆布、ごま、かつおぶし」を混ぜた「特製ごはんのお供」も我が家の常備メニューです。サッとおにぎりにして補食にすることもあります。東福岡高校では保護者に向けた栄養講習も行っていて、そのときに「噛むことが大切」と教えてもらいました。ご飯をしっかり噛んで食べることが身体づくりの基本だと。食欲のないときでもこのおにぎりなら食べてくれるんです。

補食用には、廣瀬家特製ご飯のお供を混ぜたおにぎりが定番。ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富な栄養食品アーモンドも常備している

「僕は本気のラグビーがしたいんだ!」。

雄也が2歳のときにラグビートップリーグが発足し、赤ちゃんのころから主人のチーム(宗像サニックスブルース)のグラウンドでラグビーボールに触れてきました。そのせいか、昔はラグビーに対してこだわりが強く、幼稚園のときに地元のラグビーチームに体験に行ったら「僕は本気のラグビーがしたいんだ!」と言って入部を拒否。あの時はびっくりしてしまいました。

そんな雄也が東福岡高校のキャプテンをちゃんとやれているのか、ときどき心配になりますが、いい仲間たちに恵まれて楽しく過ごせているようです。周りの方には本当に感謝しています。花園予選が間もなく始まりますが、残りの高校生活を、仲間と一緒に悔いのないよう過ごしてほしいですね。

お父様は、江の川高校(現在の石見智翠館高校)時代に花園に出場し、中京大学→ニコニコドー→豊田自動織機→サニックスという経歴。スタンドオフとセンターの選手として活躍してきた

※2019年9月 公開