vol.13トライアスロン
[後編]

横倉つぼみさん(11)茨城県トライアスロン協会所属優子さん

レース直前、緊張で嘔吐しながらも闘争心をたぎらせる天性の勝負師。アスリートとしてのつぼみさんの表情を、水泳のコーチは「目が違う」と表現しました。ひと度レースを離れれば、友達とじゃれあうのが楽しい普通の小学6年生。ちょっとシャイで、カメラを向けると困ったような表情で笑います。レース終盤の辛いとき、どうやって力を振り絞るのか聞くと、「応援してくれる人に恩返ししようと思うと力が出ます」という答えが返ってきました。身長146センチ・体重36キロ(2020年12月現在)。自分の運命を自分で切り開いてきた小さな背中は、立派なアスリートそのものです。

頑張る姿で「いつもありがとう」と伝えたい。

トライアスロンの好きなところは、全力を出して戦うところです。苦しいけれど、負けたくないから頑張るしかない。そんなとき、応援してくれるみんなの姿を見ると不思議と力が湧いてきて、もうひと踏ん張りできるんです。
そこまで勝ちにこだわるのは、もともと負けず嫌いなのもあるけれど、応援してくれる人に「いつもありがとう」と感謝の気持ちを表したいという想いがあるからかもしれません。

練習は毎日やっていて、疲れているときやメニューがキツいときなど「やりたくないな」と思うことはあります。でも、ライバルの存在を思い返して気持ちを切り替えます。昔はお友達と遊べないのが悲しかったけれど、自分で決めたことだから、いまは納得しています。

水泳やランニングを初めた頃のことは幼すぎて覚えてないです。物心ついたときから、走ったり、泳いだり、自転車に乗ったりするのが当たり前でした。
いまは体を動かすことが楽しく、学校でも体育の授業が一番好きです。

信頼する、リリースポーツクラブの萩谷友美コーチ。「つぼみは水泳に欠かせないキック力が抜群。ランやバイクで鍛え上げられているんだと思います」。

レース前は緊張で食事が喉を通らないときも。

好きな食べ物はパイナップル。果物は好きです。嫌いなのはパプリカなどの苦い野菜です。
トライアスロンはスタミナが必要なので、普段からお肉や野菜をバランスよく食べなきゃと意識しているんですが、野菜は苦手なものが多いです。お菓子やジュースもなかなか止められない(笑)。でも、最近はお腹が空くことが多くなり、食べられる量が増えてきました。昔はあまり食べられなかったんです。

レースの日は、お母さんがお弁当やいろいろな補食を用意してくれるけれど、緊張しすぎて食べ物が喉を通らなかったり、食べてももどしたりしてしまいます。なので、競技前には食べられそうなものを選んで食べ、残りは競技後にゆっくり食べています。ただ、競技中に脱水症状になると力が出せなくなるので、水分だけはしっかり補給します。

野菜が得意ではないつぼみさんもお気に入りの「ニラともやしのナムル」。地元小美玉市のニラをたっぷり使用し、味の素とめんつゆ、ゴマ油とたっぷりのゴマで和える。

本気でスポーツをしているから分かる、家族の大切さ。

応援してくれる家族は一番大切な存在です。
お父さんは、トライアスロンの競技サポートを全部してくれていて、大会で優勝して恩返ししたいです。コーチとしてのお父さんは甘くないけれど、いつも冷静で正しい指摘をしてくれるから、いうことを聞かなきゃなって思います。お母さんは、毎日美味しくて栄養を考えてご飯を作ってくれて、体のことを気にかけてくれます。いま健康でいられるのはお母さんのおかげです。

トライアスロン選手としての目標は、茨城県代表として国体に出ること。
延期されていた全国大会が1月にデュアスロン(スイムを除く2種目の競技)で開催されることになったので、まずはそこで優勝することが当面の目標です。
実はスイム・バイク・ランのなかではスイムが得意なので、今回の大会はハードルが高いのですが、作戦を立てて頑張ります。

いつもはトライアスロンでのパフォーマンスを通して伝えている、お母さんへの「いつもありがとう」。今日だけは特別にメッセージにしたためる。

※2020年12月 公開