vol.13トライアスロン
[前編]

横倉つぼみさん(11)茨城県トライアスロン協会所属優子さん

数あるスポーツのなかでも、最もタフな競技の1つ「トライアスロン」。横倉つぼみさんは、キッズトライアスロンの全国大会「オールキッズトライアスロン」で小学校1年生から3年生まで3連覇した実績を誇る、トライアスロン界のホープです。生まれつき持病があり、生死をさまよったこともあるつぼみさん。体力作りのためにトライアスロンを始めましたが、練習を重ねて全国制覇を成し遂げました。類まれなファイティングスピリッツが家族のピンチを救い、多くの人に勇気を与えています。

泣きながら走る姿に「もうやめて」と何度も言いかけた。

つぼみに先天性の病気があると分かったのは、生まれて6日目のこと。
高熱が出て病院にいくと、医師から「危ないかもしれない」と言われて目の前が真っ白になりました。一カ月ほど入院して病名が判明。容体が安定し退院したあとは、生後3カ月からベビースイミングに通い、病気に勝つための体力作りが夫婦共通の課題になりました。

2歳のときに、保育園のマラソン大会でビリになり、つぼみは泣いて激しく悔しがりました。早生まれなので他の子と比べて体も小さく、速く走れないのはしょうがないんですが、つぼみは納得せず、その日から主人とランニングを始めたんです。
体力作りが必要といえども病気がある子、やりすぎなんじゃないかとわたしは反対だったんです。だけどつぼみは泣きながらも毎日パパのあとをついて行きました。その姿に、喉まで出かかっている「もうやめて」という言葉をなんとか飲み込んで送り出していました。

日々のトレーニングは裏切らず、翌年のマラソン大会ではビリから優勝の大逆転。笑顔のつぼみを見るととても嬉しい気持ちになりましたが、やはり心配で、内心は複雑でした。

1年で10センチも身長が伸び、食事量が急激に増えた。ランチジャーのスープ用容器にも、冷ましたおかずを入れて代用することも。そんなときは味噌汁をスープジャーにたっぷり入れて持参する。

病気の主人を救った、つぼみの強いハート。

ランニングとスイミングを続けてきたので、年長になり自転車が乗れるようになったタイミングでなんとなくトライアスロンの大会に出てみたところ1位になり、つぼみはトライアスロンにのめり込んでいきました。

いくつかの大会を経て、小学校1年生のときトライアスロンの全国大会となる「オールキッズトライアスロン」に出場したところまさかの優勝。家族で大興奮した翌日、主人が脳出血で倒れたんです。病院で「今夜がヤマです」と言われ、急転直下の出来事に何も考えられず、リビングでつぼみと二人泣き明かしました。

そのときも、つぼみは強かった。次の日もちゃんと学校に行きましたし、「パパが退院したときにトライアスロンが下手になっていたらガッカリするから」とすぐに練習を再開したんです。そのことを伝えると半分ヤケになっていた主人も奮起してリハビリに励み、奇跡的な速さで回復しました。

その後、つぼみと主人は二人三脚でトレーニングを積み、オールキッズトライアスロン3連覇を成し遂げました。二人の命をかけた頑張りを目の当たりにしてきて、とことんやらせてあげようとわたしもようやく肝が座りました。

コーチとして父としてつぼみさんを支えてきた学さん。昨年痛めたひざを気遣い、オーバーワークにならないように毎日のメニュー作りや練習サポートを行う。

スイッチが入るととんでもない強さを見せる。

いまは、美野里クラブという地元の陸上クラブと、水泳のリリースポーツクラブ、栃木にあるトライアスロンを専門とした宇都宮村上塾でプロのレッスンを受けながら、自主トレメニューを組み合わせてほとんど休みなく練習を続けています。

こんな風に話すと天才キッズみたいですが、いつものつぼみは普通の子なんです。お片づけが苦手で注意すると「気づいた人がやればいいじゃん」って口答えしたりして。反抗期真っ盛りですし、能天気な性格なんですよ。自主練もこっそりサボったりしていますし(笑)。でも、スイッチが入ると信じられないほど強くなる。根性あるなって思います。

トライアスロンにケガは付きもので、落車して後続の自転車にひかれたり、転倒して口の中を20針縫ったり、救急搬送もしばしば……。その度にわたしは弱気になってしまうけれど、つぼみはケガが治れば飄々としています。
将来のことも本人にお任せです。自分で決めたら止められない子なのはよく分かっていますから。トライアスロンでも他のことでも、好きなことに打ち込んで欲しいなと思っています。

好き嫌いが多くもともと食が細かったが最近は食欲旺盛。大好きなフルーツや乳製品を中心に、補食もしっかり持参。練習前にペロっと平らげることも。