vol.14女子サッカー
[後編]

中道はなさん(18)湘南学院高校女子サッカー部所属陽子さん

「サッカーの魅力はみんなで一つのボールをつないで、シュートを決めるところ!」と話すはなさん。キャプテンとしてだけではなく、ディフェンスの要・センターバックとしてチームをまとめてきました。1月に兵庫で行われた選手権では念願の「全国1勝」をみんなでつかみ、高校サッカーを「やり切った」と言い切ります。最後の挨拶で伝えたかったことは、家族への感謝の気持ち。家を出て、大学生になる春。新たな夢を抱いて、力強い第1歩を踏み出そうとしています!

高校サッカーに悔いなし。やり切った! 楽しかった!

夢にまでみた全国大会。みんなと一緒に行けて本当に最高でした。(感染予防対策で)大声を出しての応援はできなかったけれど、ベンチで座っていても興奮が止まらなかったです。初戦の神戸弘陵戦は相手が地元でアウエー感を感じたけれど、最後まで心を一つにして2-0で勝利。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、みんなが私のところにワーッって集まってきてくれて、抱き合って泣きました。どうしても欲しかった「全国1勝」だったので最高の瞬間でした。みんなかっこよかった! 私はベンチから声を出して応援することしかできなかったけど予選からずっと「絶対にはなを全国に連れて行くから」とか「逆に変なプレーできないよ」とか言ってくれてうれしかったです。試合前の集合写真のときも「4番」(はなさんの背番号)のユニホームを掲げて撮ってくれて、みんなの優しさを感じました。こんな私に、キャプテンマークをつけさせてくれてありがとう。感謝しかありません。2回戦で藤枝順心に負けてしまったけれど、やり切りました! 楽しかった! 高校サッカーの悔いはありません。

木村みき監督との交換日記でもある「サッカーノート」には、苦しかったことやうれしかったことの本音が記されている。春からは大学女子サッカー日本一を目指すが、ノートの言葉がきっとはなさんの背中を押してくれる。

監督からの一言で気持ちを切り替えることができた。

選手12人、マネージャー1人の3年生13人は、本当に個性が強くて、負けず嫌いの集団で、まとめるのが大変なチームでした。みんな自分の意思を持っているから、ぶつかることも多かったんです。そんな仲間を納得させて、まとめるためには、口には出せないいろんな苦労がありました。家で弱音は吐けないし、チームではキャプテンとしてしっかりしなきゃいけないし……。でも、みきさん(監督)がいつも悩みを聞いてくれました。ケガをしたとき、みきさんが「手術してケガを治しなさい。大学でのあなたを応援するから」と言ってくれたんです。あの一言で、チームの勝利だけを考えようって切り替えることができました。

私は幼稚園のときにサッカーを始めて、「全国大会に出たい!」と思って湘南に入りました。それなのに予選前にケガをしちゃって、勝ち上がっていくみんなをうらやましく思ったこともありました。「全国でプレーしたかったな」と落ち込んだこともありました。でも今はもう前向きです。大学は、幼馴染で何でも分かり合える(吉川)麗と、手が焼けるけどかわいくて仕方ない(北川)心子と3人、同じチームでサッカーができるのですごく楽しみです。他のメンバーとも、大学でまた対戦できるかな? 考えるとワクワクして「早く復帰しなきゃ」って思います。6月の復帰を目指して、リハビリをもっと頑張ろうと思っています。

サッカーに熱中した高校生活に悔いなし。同級生や後輩たちがお守りをつくって応援してくれた。ケガをしたときは「はなを全国につれて行くから!」とチームが団結。みごと4年ぶりの出場を果たすことができた。

お母さんの鶏の唐揚げに勝るパワーフードはない!

大学に行くのは楽しみだけど、正直、寂しさもあります。「あぁ、お母さんの鶏の唐揚げがしばらく食べられなくなるのか~」ってことです。お母さんの料理って、なんでもおいしいんです。お弁当もいつもいろんな種類のおかずを入れてくれて、栄養にも気を使ってくれました。お父さんとお母さんと、妹、家族4人で食べる家のごはんが大好きなんです。 

全国大会で負けたあと、キャプテンとして最後に保護者の前で挨拶をしました。そのとき、お母さんの顔を見ないように話しました。見たらたぶん、泣いてしまうと思ったから。春からは家を出て麗と2人暮らしをしますが、遠くから応援してほしい。自炊もがんばるよ。最近はガパオライスとか、ハンバーグとか作れるようになったけど……やっぱりたまに会いに来て欲しいな。お母さんが作る鶏の唐揚げに勝るパワーフードは、どこを探してもありません。

感謝の言葉をなかなか言えなかったはなさん。最後の全国大会が終わったとき、心からの「ありがとう」を言うことができた。言葉に出来ない思いがあふれたが、涙をこらえてしっかりと陽子さんに伝えた。

※2021年3月 公開