vol.14女子サッカー
[前編]

中道はなさん(18)湘南学院高校女子サッカー部所属陽子さん

2021年9月に開幕する国内初のプロリーグ「WEリーグ」の誕生により、今後ますます飛躍が期待される女子サッカー。高校女子選手権大会で全国制覇の実績を持つ湘南学院高校でキャプテンとして活躍したのが中道はなさん(DF)です。予選直前に大きなケガを負い出場は叶いませんでしたが「チームのために」と気持ちを切り替え、みごと4年ぶりの全国大会へ! はなさんの背中を押したのは、現役女子サッカー選手でもある母・陽子さんの真心こもったお弁当でした。

最後の「ありがとう」、絶対にわすれません。

サッカー部を引退したら、はなの顔がやさしい女の子の顔になりました。不思議ですよね。それだけ、背負っていたものが大きかったのかな。もうすぐ家を出て、大学生活と、初めての自炊生活が始まりますが、私よりも主人のほうがナーバスになっているみたいで「寂しいな」「いつ行っちゃうの?」とはなに何回も聞いています。子離れしていないのが恥ずかしいですね。それくらい、いつも一緒にいるのが我が家族でした。

「はな」という名前をひらがなにしたのは「何色にでもなれるように」「自分らしさを持てるように」という思いをこめてつけたのです。自分らしく、高校サッカーを終えられたかな? キャプテンとして立派にやりきった姿を見たときは涙が止まらなかったです。最後の試合を終えたあと凛とした表情で「3年間、湘南でサッカーができて楽しかった。応援ありがとうございました」と監督、コーチ、保護者の前で言った言葉を見て「強くなったね」と思いました。あの時言ってくれた特別な「ありがとう」は、絶対にわすれません。私も心から、ありがとう、を言いたいです。

「お母さんの鶏の唐揚げはどこよりも美味しい」と言い切るはなさん。陽子さんが毎朝4時に起きて作ってくれるお弁当が、全国大会出場の原動力になった。春からの自炊生活も希望でいっぱい!

大好きな監督のもと、人として驚くほど成長した。

「左ひざ前十字靭帯断裂」。9月の練習中、はなの選手生命が危ぶまれるほどの大ケガをしました。全国大会まで4カ月。当初は手術をせずに試合に間に合わせるつもりでしたが、復帰してすぐの練習で再度ひざを負傷してしまいました。
「絶対に試合に出る! この先どうなっても構わない」とはなは言いましたが、私は無理をしないで欲しいと思いました。母としての思いだったと思います。「将来のことを考えたら、手術してちゃんと治して欲しい」と私も苦しみました。

そんなとき、木村みき監督にとても助けられました。はなと何度も話し合ってくれ、手術に踏み切ることができました。入院と、リハビリ。選手としての出場は絶望となりましたが、メンバーに残して頂き、「裏方」として力になる大切さを教えていただきました。そしてしだいに、はなの話す言葉が変わってきたんです。自分のことよりも、チームのこと、仲間のいいところをよろこぶ発言になってきたんですよね。心から「勝てるチーム」を目指していたんだと思いました。「いいチームになっているな」と思い、ますます湘南学院を応援しようと思いました。

湘南学院では全国大会を目指して1年前からチームで本格的な補食をスタートさせた。それまで菓子パンやお菓子を食べていた選手の意識が激変。はなさんも高タンパク低脂肪の食を意識するようになったとか。

つらいだろうに、家では一切弱音を吐かなかったね。

振り返ると、はなは家で一切弱音を吐きませんでしたね。たまに「私には話してくれないのかな……」と寂しく思ったこともあったけど、それだけみき先生と仲間にしっかりと支えてもらっていたのでしょう。はなは幸せ者だと思いました。

私ができることは、心を込めてお弁当を作ることだけでした。ケガをきっかけにはなも今まで以上に体のことを考え、脂質や糖質を取りすぎないよう気を使っていましたね。みんなから「はな、太った~!」って言われたくなかったから……かな? 体重を毎日測り、練習後に補食をとって、将来を見据えた体づくりをしている姿を頼もしく思っていました。

幼稚園のときにサッカーを始めたはな。「やりなさい」って言ったことがないのに一度も根を上げず、ここまで続けてきました。つらいこと、いっぱいあったと思うけど、最後は全国大会につれて行ってくれて、ありがとう。インターハイ中止、無観客試合などいろいろあった1年だったけど、最後に全国の大舞台で応援できたことは一生忘れません。「優しい顔」になったあなたをもう少し見ていたかったけど……。ケガを治して、大学で思い切りプレーできる日が来ることを祈っています。仲間のことを思いやる優しさが大好きだけど、大学では自分のこと「も」大事にして欲しいですね。

「お弁当は私ができる唯一のこと。キャラ弁みたいな可愛いお弁当は作れなかったけど、玉子焼きにノリの佃煮を入れたり、なめたけを入れたりしながら、栄養とおいしさを第一に考えてきました」と陽子さん。