サーモス株式会社の歴史

今日に至るサーモス株式会社は、日本酸素株式会社（現：日本酸素ホールディングス株式会社）からその歴史をスタートしました。日本酸素は、酸素、窒素、アルゴンをはじめとする、様々な産業ガスを鉄鋼、化学、エレクトロニクス、自動車、建設、造船、食料など、多種多様な産業分野へ供給する企業です。1976年に、同社内開発部にて新規事業チームが発足。工業用の技術を応用して、ステンレス製魔法びんの開発が始まりました。

そして1978年、日本酸素が、世界初の高真空ステンレス製魔法びん「アクト・ステンレスポット」を製品化。それまでガラス製が中心だった魔法びんの世界で、「割れない」という、ガラス製の弱点を克服した新たな価値を提案することになりました。
このステンレス製魔法びんの開発を経て1989年には日本酸素がイギリス、アメリカ、カナダのサーモス事業を買収し、翌年サーモス事業部が発足。そして2001年、日本酸素サーモス事業部と、魔法びんの製造を担ってきた株式会社日酸サーモが統合して、現在のサーモス株式会社の設立へと至ります。

1978年に日本酸素が、世界初の高真空ステンレス製ボトル「アクト・ステンレスポット」を発売しました。

高真空ステンレス製ボトルの登場は、1904年から続く魔法びんの歴史のなかでも特に大きな出来事でした。ガラス製魔法びんは、ボトル本体を真ちゅうなどの金属製またはプラスチック製のケースに入れて持ち運びやすくしていましたが、倒したり落としたりすると割れてしまうという最大の欠点がありました。この欠点を克服したのが、ステンレス化です。振動などにも強いタフなステンレス製ボトルは、バイクでのツーリングやアウトドア需要から徐々に浸透し、人々の暮らしに馴染んでいきました。

アクト・ステンレスポットの登場から4年、1982年には「シャトルミニ」という子ども向けボトルが登場。価格も発売当初よりは大きく下がり、手頃な価格帯になったことから、遠足や運動会用として大ヒットしました。

1986年には、スリムタイプの「シャトルタウン」が発売。軽くて携帯に便利なことから登山やアウトドア用途でも愛用されました。さらに軽さと強度を追求し、1988年には世界初のチタン製ボトル「シャトルチタン」を開発しました。

こうしてステンレス製魔法びんは一家にひとつの時代を経て、現在の一人ひとつのマイボトルの時代に移ります。人々が当たり前に使用しているケータイマグなどのマイボトルが普及した背景には、ステンレスボトルの誕生と発展の歴史があったのです。

サーモス株式会社はその前身となる日本酸素株式会社サーモス事業部の時代から、まだ誰も挑戦したことがない数々の製品開発に情熱を注いできました。

ステンレス製ボトルを普及させるなか、新しいボトルの素材として「チタン」に注目。耐食性、耐熱性、強度が優れながらも、金属比重はステンレスの約60％と非常に軽い性質を持つチタンは、かつては宇宙開発や航空機、潜水艦などにのみ使われた素材です。

チタン素材の利用は大きなチャレンジでしたが、試行錯誤を重ねた末、1988年にチタン製魔法びん「シャトルチタン」を発売しました。シャトルチタンは、装備品を1グラムでも軽量化したい登山家・冒険家からその実力を認められ、極地への探検にも採用されています。過酷な自然環境の中でも対応できる実力は、「山専用ボトル」への提供へと繋がっていきました。

サーモスが世界初の製品として、いち早く人々に届けてきた製品はこれだけではありません。コップで注いで飲むことが主流だった水筒を、直接口をつけて飲むスタイルにした業界初の保冷専用ボトル「真空断熱スポーツボトル」、スポーツボトルのアイデアを発展させた日常使いの保温・保冷両用ボトル「真空断熱ケータイマグ」などがあります。

さらに、炭酸に対応した水筒「真空断熱イージーキャップボトル」、魔法びんの保温力を使って食材に火を通す、節電と安全性を両立した「保温調理器シャトルシェフ」、お弁当に温かいスープや冷たいデザートを添える「真空断熱フードコンテナー（スープジャー）」など、いつの時代においても人々の暮らしに便利や快適を提案してきました。断熱技術を応用した製品作り、世の中のニーズを先取りするチャレンジ精神は、これから先も変わることはありません。

サーモスは、製品を製造するだけではなく直営店「サーモス スタイリングストア」を東京都、神奈川県、兵庫県に計4店舗（2022年1月現在）オープンしています。直営店ならではの豊富なラインアップのほか、パッキンなど交換用部品も取りそろえ、「サーモス製品のある毎日」をサポートしています。ストア限定商品や、名入れサービスなども好評です。